書評

『火星年代記』(早川書房)

  • 2017/07/04
火星年代記  / レイ・ブラッドベリ
火星年代記
  • 著者:レイ・ブラッドベリ
  • 翻訳:小笠原 豊樹
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:文庫(414ページ)
  • 発売日:2010-07-10
  • ISBN:4150117640
内容紹介:
火星への最初の探検隊は一人も帰還しなかった。火星人が探検隊を、彼らなりのやりかたでもてなしたからだ。つづく二度の探検隊も同じ運命をたどる。それでも人類は怒涛のように火星へと押し寄せた。やがて火星には地球人の町がつぎつぎに建設され、いっぽう火星人は…幻想の魔術師が、火星を舞台にオムニバス短篇で抒情豊かに謳いあげたSF史上に燦然と輝く永遠の記念碑。著者の序文と2短篇を新たに加えた新版登場。

幻想火星SF

きのう紹介したアンディ・ウィアー『火星の人』はリアル系火星SFの最新型ですが、その対極に、幻想系の火星SFがある。心の中のフロンティアを赤い惑星に投影するタイプですね。E・R・バローズ『火星のプリンセス』(ディズニー映画『ジョン・カーター』の原作)あたりが源流か。

【新版】火星のプリンセス  / エドガー・ライス・バローズ
【新版】火星のプリンセス
  • 著者:エドガー・ライス・バローズ
  • 翻訳:厚木 淳
  • 出版社:東京創元社
  • 装丁:文庫(288ページ)
  • 発売日:2012-03-02
  • ISBN:4488601456
内容紹介:
南軍騎兵大尉ジョン・カーターはある夜、忽然としてアリゾナから火星に転移する。時まさに火星は乱世戦国、四本腕の獰猛な緑色人や、高度な科学力を持つ地球人そっくりの赤色人が戦争に明け暮れていた。その渦中に飛びこんだ快男子カーターは絶世の美女デジャー・ソリスと結ばれるべく、剣を片手に縦横無尽の大活躍を見せる…。スペースオペラの原点ともいうべき不朽の傑作。

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その代表格が、ごぞんじレイ・ブラッドベリの『火星年代記』。冒頭に置かれたわずか1ページの掌編「ロケットの夏」を読むだけで、たちまち魔力に鷲掴(わしづか)みにされる。ロケット打ち上げの「熱い空気の大津波」が、オハイオ州の冬を一掃する場面。

ロケットの夏(、、、、、、)。そのことばが、風通しのよくなった家に住む人々の口から口へ伝わった。ロケットの夏(、、、、、、)。あたたかい砂漠の空気が、窓ガラスの霜の模様を変化させ、芸術作品を消した。スキーや橇がにわかに無用のものとなった。冷たい空から町に降りつづいた雪は、地面に触れる前に、熱い雨に変質した(小笠原豊樹訳)

そうそう、むかし読んだな……と懐かしく思い出す人もいるでしょうが、実は現行の『火星年代記[新版]』(ハヤカワ文庫SF、2010年刊)は、おなじみのハヤカワ文庫NV版とは中身がちょっと違っている。

1950年初刊の『火星年代記』は、ブラッドベリがあちこちに発表した火星にまつわる短編群から16編を選び、各編の頭に「二〇〇〇年一月」というふうに年月を追加して再配列し、つなぎの掌編を書き下ろして完成させた連作集。どれを入れるかについては、著者自身も迷いに迷ったらしい。最終的に、97年に出た決定版(現行の邦訳書新版)では、「空のあなたの道へ」を抜いて「荒野」(『太陽の黄金の林檎』所収)を入れ、「火の玉」(『刺青の男』)を追加収録。各話の年月を30年未来へずらしている。著者は、新しい序文の中で、本書は現実の科学に基づくSFではなく神話であり、だからこそいまだ錆(さ)びつかずに済んでいるのだと書く。妄想は科学より強し?
火星年代記  / レイ・ブラッドベリ
火星年代記
  • 著者:レイ・ブラッドベリ
  • 翻訳:小笠原 豊樹
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:文庫(414ページ)
  • 発売日:2010-07-10
  • ISBN:4150117640
内容紹介:
火星への最初の探検隊は一人も帰還しなかった。火星人が探検隊を、彼らなりのやりかたでもてなしたからだ。つづく二度の探検隊も同じ運命をたどる。それでも人類は怒涛のように火星へと押し寄せた。やがて火星には地球人の町がつぎつぎに建設され、いっぽう火星人は…幻想の魔術師が、火星を舞台にオムニバス短篇で抒情豊かに謳いあげたSF史上に燦然と輝く永遠の記念碑。著者の序文と2短篇を新たに加えた新版登場。

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初出メディア

西日本新聞

西日本新聞 2015年6月5日

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