書評

『紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)』(早川書房)

  • 2017/08/10
紙の動物園  / ケン・リュウ
紙の動物園
  • 著者:ケン・リュウ
  • 翻訳:古沢 嘉通
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:文庫(263ページ)
  • 発売日:2017-04-06
  • ISBN:4150121214
内容紹介:
第一短篇集である単行本『紙の動物園』から、母と息子の絆を描いて史上初のSF賞3冠に輝いた表題作など、7篇を収録した短篇集

二つの祖国

『火花』の刷り部数がついに209万部に達したとかで、又吉フィーバーはますます過熱。6ページのエッセイが載るだけで掲載誌の「文學界」が2万部の発売前増刷を決め、またそれがニュースになる始末。その効果は、とうとう翻訳SFにまで及ぶことに。今週の「アッコにおまかせ!」で又吉直樹が推薦したケン・リュウ『紙の動物園』(古沢嘉通編訳、早川書房)がバカ売れして、ネット書店でまたたく間に品切れになったのである。ああ、あやかりたい――という羨望(せんぼう)はともかく、いや、さすがに又吉さんはお目が高い。この『紙の動物園』は、今年1冊だけ翻訳SFの新刊を読むならコレ! と、(一応、SFを専門とする)大森が太鼓判を捺(お)した短編集なんですね。

火花  / 又吉 直樹
火花
  • 著者:又吉 直樹
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:文庫(180ページ)
  • 発売日:2017-02-10
  • ISBN:4167907828
内容紹介:
第一五三回芥川賞を受賞し、二〇一五年の話題をさらった「火花」が文庫化。受賞記念エッセイ「芥川龍之介への手紙」を併録。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

これが初の邦訳書となるケン・リュウは1976年、中国・蘭州市生まれ。11歳で両親と米国に渡り、ハーヴァード大学を卒業。英語で小説を書く、中国系のアメリカ作家である。

表題作の語り手は、中国人の母と米国人の父を持つ“ぼく”。河北省の貧しい農村に生まれた母さんは、英語ができないのに、わずかなチャンスをものにしてアメリカに渡り、“ぼく”を産んだ。折り紙の動物に命を吹き込む不思議な力を持ち、幼い頃、“ぼく”は母さんがつくった紙の虎たちと遊んで育った。しかし、成長するにつれ、“ぼく”は「スター・ウォーズ」のおもちゃをほしがり、いまだにうまく英語を話せない母さんを遠ざけるようになる。“ぼく”が求めたのは、アメリカ的なしあわせだった。そして……。

わずか20ページ足らずしかないこの短編は、SFというより幻想味のある家族小説だが、母親を持つすべての読者の胸を直撃する。SFの枠を超えて、末永く読み継がれそうな名品だ。

巻末の「良い狩りを」は、妖怪退治を生業とする父親を持つ“ぼく”が語り手。子どものころ知り合った妖狐との関係が物語の軸になる。こちらも日本人にとってはなじみ深い、せつない妖怪ファンタジー。

バリバリの本格SFから社会問題に鋭く切り込むバイオSFまで、バラエティ豊かでハイレベルな15編を収録する。

【書評対象は新☆ハヤカワ・SF・シリーズ】
紙の動物園  / ケン・リュウ
紙の動物園
  • 著者:ケン・リュウ
  • 翻訳:古沢 嘉通
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(413ページ)
  • 発売日:2015-04-22
  • ISBN:4153350206
内容紹介:
〈ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞受賞〉母さんがぼくにつくる折り紙は、みな命を持って動いていた……。史上初の三冠を受賞した表題作など全15篇を収録した、日本オリジナル短篇集

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

紙の動物園  / ケン・リュウ
紙の動物園
  • 著者:ケン・リュウ
  • 翻訳:古沢 嘉通
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:文庫(263ページ)
  • 発売日:2017-04-06
  • ISBN:4150121214
内容紹介:
第一短篇集である単行本『紙の動物園』から、母と息子の絆を描いて史上初のSF賞3冠に輝いた表題作など、7篇を収録した短篇集

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

西日本新聞

西日本新聞 2015年8月6日

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