書評
『地球の食卓―世界24か国の家族のごはん』(TOTO出版)
トヨザキ的評価軸:
「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
海外旅行でも、一番の楽しみは食事と市場のひやかしだったりするオデは、キュウリやピーマンといった普段見慣れている野菜の大きさや形や色の違いだけで激しく食欲をそそられ、どうやって食べるのか見当もつかない果物や、見たことのない魚、牛や羊の頭、多種多様な燻製食品、乳製品、香辛料、飲み物が彩りも鮮やかに並んでいる様を見ているうちに、涎を垂らす始末。屋台で売っている串焼きなんかを歩き食いしたりしているうちに、あっという間に数時間経ってしまうんである。
という人間なので、報道写真家のピーター・メンツェルとジャーナリストのフェイス・ダルージオのコンビが世界二十四力国を巡って集めた、三十家族の肖像と各家庭の一週間分の食材を紹介する『地球の食卓』には瞠目そして刮目した次第。一週間分の食費が日本円で五百九十四円、肉や魚がほとんど並ばないブータンのナムガイさん一家。ボスニア紛争が生んだ飢餓地獄からようやく立ち直り、豊かな食材が並ぶようになったサラエボのデュドさん一家。ほとんどの食材を配給品に頼らねばならないスーダン難民キャンプに住むアブバカルさん一家。自分で仕留めたアザラシのシチューが大好きなグリーンランドのマドセンさん一家。スーパー売りのイワシなど魚が目立つ東京都小平市のウキタさん一家。ファストフード代が週に八千四百五十円、箱物の食材ばかり並ぶアメリカはノースカロライナ州のリーバイスさん一家。薄いミルク粥を家族全員ですするマリのナトモさん一家。
この写真文集の中には、世界の食卓の“現在”がある。伝統食がファストフードや先進国で作られた加工食品にとって代わられつつある憂うべき現状。高カロリーの食材や外食によって標準体重を超過し、心臓病や糖尿病を患う人が増加の一途をたどる先進国がある裏で、いまだ何億もの飢餓に苦しむ人々がいるという不条理。いろんな国のさまざまな食材を目で楽しませてくれると同時に、写真の合間に挿入されているリポートやコラムによって、二十一世紀の地球上に住むすべての人間が抱える重い問題も突きつけてくる本なのだ。というわけで、食い過ぎ飲み過ぎの我が身を一瞬反省。でも、やっぱり肉が好き。御免。
【この書評が収録されている書籍】
「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
世界二十四力国三十家族の食卓が人間が抱える問題を突きつける
外に脂肪がついているデブであるばかりか、内臓脂肪という不気味な何かすら蓄えているにちがいないメタボリック・シンドロームおばはんであるオデは、当然のことながら食いしん坊バンザイ人生を送っているのである。先日も中野にある生肉の名店に行って、芋焼酎を鯨飲しながら、肉を馬食してきた次第。海外旅行でも、一番の楽しみは食事と市場のひやかしだったりするオデは、キュウリやピーマンといった普段見慣れている野菜の大きさや形や色の違いだけで激しく食欲をそそられ、どうやって食べるのか見当もつかない果物や、見たことのない魚、牛や羊の頭、多種多様な燻製食品、乳製品、香辛料、飲み物が彩りも鮮やかに並んでいる様を見ているうちに、涎を垂らす始末。屋台で売っている串焼きなんかを歩き食いしたりしているうちに、あっという間に数時間経ってしまうんである。
という人間なので、報道写真家のピーター・メンツェルとジャーナリストのフェイス・ダルージオのコンビが世界二十四力国を巡って集めた、三十家族の肖像と各家庭の一週間分の食材を紹介する『地球の食卓』には瞠目そして刮目した次第。一週間分の食費が日本円で五百九十四円、肉や魚がほとんど並ばないブータンのナムガイさん一家。ボスニア紛争が生んだ飢餓地獄からようやく立ち直り、豊かな食材が並ぶようになったサラエボのデュドさん一家。ほとんどの食材を配給品に頼らねばならないスーダン難民キャンプに住むアブバカルさん一家。自分で仕留めたアザラシのシチューが大好きなグリーンランドのマドセンさん一家。スーパー売りのイワシなど魚が目立つ東京都小平市のウキタさん一家。ファストフード代が週に八千四百五十円、箱物の食材ばかり並ぶアメリカはノースカロライナ州のリーバイスさん一家。薄いミルク粥を家族全員ですするマリのナトモさん一家。
この写真文集の中には、世界の食卓の“現在”がある。伝統食がファストフードや先進国で作られた加工食品にとって代わられつつある憂うべき現状。高カロリーの食材や外食によって標準体重を超過し、心臓病や糖尿病を患う人が増加の一途をたどる先進国がある裏で、いまだ何億もの飢餓に苦しむ人々がいるという不条理。いろんな国のさまざまな食材を目で楽しませてくれると同時に、写真の合間に挿入されているリポートやコラムによって、二十一世紀の地球上に住むすべての人間が抱える重い問題も突きつけてくる本なのだ。というわけで、食い過ぎ飲み過ぎの我が身を一瞬反省。でも、やっぱり肉が好き。御免。
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