書評

『ごっつい奴 浪花の夢の繁盛記』(講談社)

  • 2017/08/18
ごっつい奴 浪花の夢の繁盛記 / 江上 剛
ごっつい奴 浪花の夢の繁盛記
  • 著者:江上 剛
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(338ページ)
  • 発売日:2010-01-19
  • ISBN-10:4062159945
  • ISBN-13:978-4062159944
内容紹介:
商いの基本は、人を喜ばすことや!ちっぽけな定食屋の手伝いのかたわらヤミ商品を売って糊口をしのいだ男が、大阪を地盤に大外食チェーンを築き上げようとしていた。小手先じゃなく、正面突破こそが成功につながる!いまだからこそ読みたい、痛快出世物語。
現代は、閉塞状況にある。景気がよくなる展望もないから、給料が上がらない。生活は苦しくなる一方ときている。人々は暗い表情だ。

思い起こせば、そんな日本にも、貧しいながらエネルギーに満ちた明るい時代があった。終戦直後である。

敗戦ショックから立ち上がるように、焼け跡の中から、さまざまなビジネスが生まれた。第一次ベンチャーブームである。ホンダやソニーもそうである。本書は、モノづくりではなく、商いのベンチャー物語だ。舞台は、大阪梅田の焼け跡に突如出現した闇市だ。テンポのよい会話を軸に、話は小気味よく展開する。主人公は、呉の鎮守府から復員した、丹波生まれの明るく、元気で、喧嘩がめっぽう強い、岡本丑松(うしまつ)である。

丑松は、戦友が営む定食屋に転がり込み、知り合った浮浪者の寅雄と千代丸を子分に、石鹸づくりを始め、ひと山当てる。その後、横流しされた米軍放出物資を売る、パリ商会を始める。

丑松のほか、ヤクザの親分、特攻くずれの金貸し、フィクサーもどきの元校長先生、闇市の赤ヒゲ先生など、ひと癖もふた癖もある人物が登場し、縦横無尽に活躍するが、彼らの謳歌した自由はほんの一瞬だった。時代が落ち着くにつれて、闇市に対する警察の取り締まりが厳しくなり、闇市に生きる人々は、転身を迫られる。丑松は、リスクを恐れず、時代の変化に立ち向かった。危ない橋を幾つもわたり、昭和23年、ついに梅田に「みなと茶屋」を立ち上げ、喫茶店や食堂、寿司屋などの入った5階建てのビルを建てる。

昨今は、「おもてなし」などと、いささかヤワなコトバが流行っているが、丑松はもっと直接的だ。「商いの基本は人を喜ばすことや」と叫ぶのだ。なるほど、これが浪花商人道かと納得する。

少々野蛮だが、エネルギーに満ちあふれた、愛すべきキャラクターの丑松の強烈な生き方は、いまの日本人にもっとも欠けているところである。
ごっつい奴 浪花の夢の繁盛記 / 江上 剛
ごっつい奴 浪花の夢の繁盛記
  • 著者:江上 剛
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(338ページ)
  • 発売日:2010-01-19
  • ISBN-10:4062159945
  • ISBN-13:978-4062159944
内容紹介:
商いの基本は、人を喜ばすことや!ちっぽけな定食屋の手伝いのかたわらヤミ商品を売って糊口をしのいだ男が、大阪を地盤に大外食チェーンを築き上げようとしていた。小手先じゃなく、正面突破こそが成功につながる!いまだからこそ読みたい、痛快出世物語。

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潮 2010年3月5日

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