コラム

私の好きなもの

  • 2017/09/09
(1)古書目録を読むこと。もし、書評という義務がなかったら、私は古書目録ばかりを読んでいて、本はほとんど読まないかもしれない。といっても、別段、古書目録に面白いことが書いてあるわけではない。あるのは書名の羅列だけだが、読む人が読めば、それは宝探しのための地図となる。しかも、宝はその場で電話をかけて注文を出せば、手に入れることができるのである。長いあいだ探しつづけてきた本を古書目録の中に見いだしたときの歓喜。そして、それを取り逃がしたときの絶望。古書目録は、この二つを交互に味わわせてくれる興奮剤なのだ。ただし、日本の古書目録はフランスのそれに比べてそっけなさすぎる。もっと個性の滲(にじ)みでた目録があってもいい。

(2)パリのカフェのテラスに座って、行きかうパリジェンヌを眺めること。「この世でもっとも新しいもの、それは、とことん時代遅れになったものの中にしかない」と言ったのは、皇妃ジョゼフィーヌの衣装係の女性だそうだが(アルベール・ロビダ『絵で見るパリモードの歴史』講談社学術文庫)、カフェのテラスから観察していると、この言葉の真実性を実感できる。パリジェンヌたちはそれぞれ勝手に「とことん時代遅れになったものの中」から新しいモードを見つけだしてくる生れついてのデザイナーなのだ。

絵で見るパリモードの歴史 エレガンスの千年 (講談社学術文庫) / A. ロビダ
絵で見るパリモードの歴史 エレガンスの千年 (講談社学術文庫)
  • 著者:A. ロビダ
  • 出版社:講談社
  • 装丁:文庫(320ページ)
  • 発売日:2007-01-11
  • ISBN:4061598007

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(3)パリのなんでもないカフェで食べる各種のオムレツ。フランス料理をいろいろと食べ歩いたあげくに出した結論がこれ。フランスの卵は日本の卵に比べて圧倒的にうまい。そのせいか、卵をあまり工夫せずに、平凡な素材と一緒に使った「カフェのオムレツ」が一番。とくに好きなのが、ジャガイモとラルドン(厚切りベーコン)を具にしたオムレツ。庶民的な料理もうまい国が真にグルメの国なのである。

初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2007年1月28日

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