書評

『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法』(太田出版)

  • 2017/11/21
子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法 / ジャンシー・ダン
子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法
  • 著者:ジャンシー・ダン
  • 出版社:太田出版
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(416ページ)
  • 発売日:2017-09-26
  • ISBN-10:4778315960
  • ISBN-13:978-4778315962
内容紹介:
「言ってくれればよかったのに」「言わなくてもわかってくれると思っていた」子育て最後のタブー。母親がしばしばパートナーに対して覚える、ショッキングといってもいい、沸騰するほどの怒りについて!

あらゆる人間関係の改善に応用できそう

1歳の男の子を育てている女性に本書の話をしたら「えっ、そんな方法あるんですか?」と笑いながら訊かれた。乾いた笑いだった。それまで仲睦まじかったのに、子どもが生まれてから夫に激しい怒りをおぼえるようになってしまう。万国共通の母親の悩みに、真正面から向き合った本だ。

著者は『ニューヨーク・タイムズ』や『ヴォーグ』などで活躍するフリーライター。同業者である夫との間に、幼い娘がひとりいる。夫婦揃って家で仕事をしているにもかかわらず、子どもに振り回されているのは自分ばかり。例えば、著者が電話で大事なインタビューを行っている最中に、娘が〈うんち うんち〉と大騒ぎしながら乱入してくるのだ。仕方なく取材を中断し、夫のいる部屋に娘を連れて行くと、彼はカウチに寝そべっていて〈うつろな瞳に、スマートフォンのやわらかな光が映っていた〉。チェスのゲームで遊んでいたからだ。これは腹が立つだろうなと思う。

気がつけばケンカの繰り返し。小さな娘が仲裁に入るほど険悪になった関係をどうやって修復していくか。著者は自分の職業を活かし、さまざまな専門家に話を聞く。よさそうな方法があれば積極的に試す。その過程が冒険小説のように面白い。なかでも傑作なのが、FBIの人質解放交渉人に興奮した容疑者との接し方を教わるくだり。著者はFBIのメソッドを夫に伝え、激高した自分をなだめるときに使ってもらうのだ。

どちらかが我慢するのではなく、2人はゲームのように楽しみつつ課題をクリアしていく。夫婦にかぎらず、あらゆる人間関係の改善に応用できそうだ。男性にも、子どもがいない人にも一読をすすめたい。
子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法 / ジャンシー・ダン
子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法
  • 著者:ジャンシー・ダン
  • 出版社:太田出版
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(416ページ)
  • 発売日:2017-09-26
  • ISBN-10:4778315960
  • ISBN-13:978-4778315962
内容紹介:
「言ってくれればよかったのに」「言わなくてもわかってくれると思っていた」子育て最後のタブー。母親がしばしばパートナーに対して覚える、ショッキングといってもいい、沸騰するほどの怒りについて!

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初出メディア

週刊金曜日

週刊金曜日 2017年10月20日

わたしたちにとって大事なことが報じられていないのではないか? そんな思いをもとに『週刊金曜日』は1993年に創刊されました。商業メディアに大きな影響を与えている広告収入に依存せず、定期購読が支えられている総合雑誌です。創刊当時から原発問題に斬り込むなど、大切な問題を伝えつづけています。(編集委員:雨宮処凛/石坂啓/宇都宮健児/落合恵子/佐高信/田中優子/中島岳志/本多勝一)

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