コラム

張競|2009年今年の三冊『江戸演劇史(上・下)』『近代書史』『犬の帝国 幕末ニッポンから現代まで』

  • 2017/07/01

渡辺保著『江戸演劇史(上・下)』(講談社)

演劇が盛んで劇の種目が多い時代の、舞台美術の全容を網羅的に語る。役者や劇作家の活躍を主軸に置き、演劇史の壮大な絵巻を描き出す。スコラ的な衒(てら)いはなく、素人にもわかりやすく面白い。

江戸演劇史 / 渡辺 保
江戸演劇史
  • 著者:渡辺 保
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(514ページ)
  • 発売日:2009-07-31
  • ISBN-10:4062155702
  • ISBN-13:978-4062155700
内容紹介:
秀吉の死、「曽根崎心中」、二代目団十郎の青春、瀬川菊之丞初下り、「忠臣蔵」の成立…。歌舞伎、能、狂言、文楽…日本の古典劇とは何か?鮮やかな筆致で描ききる記念碑的大作。

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江戸演劇史 / 渡辺 保
江戸演劇史
  • 著者:渡辺 保
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(522ページ)
  • 発売日:2009-08-01
  • ISBN-10:4062155710
  • ISBN-13:978-4062155717
内容紹介:
「助六」三座競演、おるや騒動、歌右衛門江戸へ、半四郎の輝き、江戸城最後の謡初め…。歌舞伎、能、狂言、文楽…日本の古典劇とは何か?時代の鼓動、人間の感性を描き出す畢生の大作。

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石川九楊著『近代書史』(名占屋大学出版会)

近代の書道史は日本のみならず、東アジア漢字文化圏においても初めての試みだ。しかも、書家より政治家、企業家や文化人の書に多くの筆墨を費やしている。筆さわりを読み解く眼力の鋭さにはもはや驚嘆するしかない。書道史にとどまらず、独特の文化史にもなっている。

近代書史 / 石川 九楊
近代書史
  • 著者:石川 九楊
  • 出版社:名古屋大学出版会
  • 装丁:単行本(776ページ)
  • 発売日:2009-07-30
  • ISBN-10:4815806004
  • ISBN-13:978-4815806002
内容紹介:
日本の近代・現代の書の歴史を、文学者や画家など知識人の書、生活者の日常書字や印刷文字までも含めて、表現された書の丹念な解読により全体として捉えた、石川九楊のライフワーク。

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アーロン・スキャブランド著、本橋哲也訳『犬の帝国 幕末ニッポンから現代まで』(岩波書店)

犬との関わりという視点から精神史の一端を読み解こうとするのは優れた発想だ。人間中心の人文研究に対する疑問が出発点の一つだが、犬に焦点を合わせると、従来の歴史研究よりも人間について多くのことがわかってきたのは皮肉だ。調査が周到で、資料の駆使も手際よい。

犬の帝国―幕末ニッポンから現代まで / アーロン・スキャブランド
犬の帝国―幕末ニッポンから現代まで
  • 著者:アーロン・スキャブランド
  • 翻訳:本橋 哲也
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:単行本(290ページ)
  • 発売日:2009-10-29
  • ISBN-10:4000221744
  • ISBN-13:978-4000221740
内容紹介:
現代日本人にとって、今や欠かせない伴侶となった犬。しかしほんの一五〇年ほど前、「野蛮な」日本犬と「文化的な」洋犬は、日本と西欧の文化的軋轢の象徴でもあり、「文明開化」の掛け声とと… もっと読む
現代日本人にとって、今や欠かせない伴侶となった犬。
しかしほんの一五〇年ほど前、「野蛮な」日本犬と「文化的な」洋犬は、日本と西欧の文化的軋轢の象徴でもあり、「文明開化」の掛け声とともに在来の犬は受難の時代をくぐってきた。
ところが昭和に入ると一転して「日本の犬」こそが帝国のシンボルにふさわしいと「忠犬」ハチ公がもてはやされ、挙国一致の戦争に多数の軍犬たちが動員され、死んでいった。
そして、現代。ペット大国日本の犬たちは、主人たちとともに大量消費の時代を迎え、生活習慣病に悩むものまで現れている。
犬という鏡に映し出された近現代日本の姿を、気鋭の米国人歴史家が鮮やかに切り取る。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2009年12月13日

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