コラム
張競|2009年今年の三冊『江戸演劇史(上・下)』『近代書史』『犬の帝国 幕末ニッポンから現代まで』
渡辺保著『江戸演劇史(上・下)』(講談社)
演劇が盛んで劇の種目が多い時代の、舞台美術の全容を網羅的に語る。役者や劇作家の活躍を主軸に置き、演劇史の壮大な絵巻を描き出す。スコラ的な衒(てら)いはなく、素人にもわかりやすく面白い。石川九楊著『近代書史』(名占屋大学出版会)
近代の書道史は日本のみならず、東アジア漢字文化圏においても初めての試みだ。しかも、書家より政治家、企業家や文化人の書に多くの筆墨を費やしている。筆さわりを読み解く眼力の鋭さにはもはや驚嘆するしかない。書道史にとどまらず、独特の文化史にもなっている。アーロン・スキャブランド著、本橋哲也訳『犬の帝国 幕末ニッポンから現代まで』(岩波書店)
犬との関わりという視点から精神史の一端を読み解こうとするのは優れた発想だ。人間中心の人文研究に対する疑問が出発点の一つだが、犬に焦点を合わせると、従来の歴史研究よりも人間について多くのことがわかってきたのは皮肉だ。調査が周到で、資料の駆使も手際よい。ALL REVIEWSをフォローする







































