コラム

鹿島 茂「2018 この3冊」|フィリップ・フック『ならず者たちのギャラリー』(フィルムアート社)、坂本尚志『バカロレア幸福論』(講談社)、新居洋子『イエズス会士と普遍の帝国』(名古屋大学出版会)

  • 2018/12/26

2018 この3冊

(1)『ならず者たちのギャラリー 誰が「名画」をつくりだしたのか?』フィリップ・フック著、中山ゆかり訳(フィルムアート社)

(2)『バカロレア幸福論 フランスの高校生に学ぶ哲学的思考のレッスン』坂本尚志著(星海社新書)

(3)『イエズス会士と普遍の帝国 在華宣教師による文明の翻訳』新居洋子著(名古屋大学出版会)



(1)は画商という、美術史では軽視されてきた媒介者に光を当てた列伝。転換点は同時代の評価されざる画家の絵を売る画商が出現した十九世紀で、画商の美意識による発見が新しい価値を創造するが、いかに優れた画商でも同世代の画家しか評価しえないというのが興味深い。

(2)はフランスの普通バカロレア受験生用の課題作文の参考書の形をとった哲学的思考の入門書。課題作文にはテーマ分析、論理展開の設計図、論議の論理的配列が重要というのが骨子だが、考えるには「型」があり、「型」は教授可能だという主張は日本の教育改革においても参考になる。

(3)は全盛期の清に宣教活動に赴いたイエズス会士アミオの書簡の分析を中心とした学術研究だが、洋の東西における普遍観念の共通性に取り憑(つ)かれたアミオの知的探索の過程が興味深い読み物になっている。

ならず者たちのギャラリー 誰が「名画」をつくりだしたのか? / フィリップ・フック
ならず者たちのギャラリー 誰が「名画」をつくりだしたのか?
  • 著者:フィリップ・フック
  • 翻訳:中山 ゆかり
  • 出版社:フィルムアート社
  • 装丁:単行本(512ページ)
  • 発売日:2018-08-25
  • ISBN:4845917157
内容紹介:
サザビーズの競売人(オークショニア)が案内する、美術史と美術品の価値に影響を与えた魅力的な画商列伝。数量でははかることが難しく、美や質や稀少性といった概念によって左右される美術品の価値。画商が売りこんでいるもの、それは漠然とした、はかり知れない、だが無限の値打ちをもったもの… もっと読む
サザビーズの競売人(オークショニア)が案内する、美術史と美術品の価値に影響を与えた魅力的な画商列伝。

数量でははかることが難しく、美や質や稀少性といった概念によって左右される美術品の価値。

画商が売りこんでいるもの、それは漠然とした、はかり知れない、だが無限の値打ちをもったもの。
すなわち芸術家の天賦の才能である。

美術の世界でこれまで顧みられることのなかった画商という存在。
美術品を売ることに対して自身の想像力と創意工夫と、
そして説得力の限りを捧げた一群の魅力的な男たち(そして女たち)が登場!!
美術史に新たな角度から光を投げかける画期的な作品!!

オークション会社サザビーズのディレクター、フィリップ・フックが
今度は「画商」について語る!!

【本書に登場する画商の例】
レンブラントを雇い、才能を開花させた男 … ファン・アイレンブルフ
セザンヌの市場価値をつくった男 … アンブロワーズ・ヴォラール
ピカソらキュビストを発見し、応援した男 … ダニエル=アンリ・カーンワイラー
モディリアーニの水先案内人 … ポール・ギヨーム

征服者なのか寄生虫なのか、あるいはその中間のど

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バカロレア幸福論 フランスの高校生に学ぶ哲学的思考のレッスン / 坂本 尚志
バカロレア幸福論 フランスの高校生に学ぶ哲学的思考のレッスン
  • 著者:坂本 尚志
  • 出版社:講談社
  • 装丁:新書(190ページ)
  • 発売日:2018-02-25
  • ISBN:406511232X
内容紹介:
「幸せとは何か?」に自力で答えを出す! フランス大学入試の哲学小論文と偉大な哲学者たちの幸福論で、論理的思考力を身につける。

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イエズス会士と普遍の帝国―在華宣教師による文明の翻訳― / 新居 洋子
イエズス会士と普遍の帝国―在華宣教師による文明の翻訳―
  • 著者:新居 洋子
  • 出版社:名古屋大学出版会
  • 装丁:単行本(414ページ)
  • 発売日:2017-10-30
  • ISBN:4815808899
内容紹介:
カトリック拡大のため東方に渡った宣教師らが、巨大な清朝に見出したものは何か。中国古来の世界像や学術は、キリスト教の教義や勃興する科学と結びつくのか。共通言語から統治体制や歴史編纂まで、新たな帝国像を描き出した18世紀のアミオを軸に、「文明の翻訳」の実相を捉える力作。思想のグローバルヒストリー。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2018年12月9日

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