書評

『イニシエーション・ラブ』(文藝春秋)

  • 2017/10/15
イニシエーション・ラブ  / 乾 くるみ
イニシエーション・ラブ
  • 著者:乾 くるみ
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:文庫(272ページ)
  • 発売日:2007-04-10
  • ISBN-10:4167732017
  • ISBN-13:978-4167732011
内容紹介:
僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて…。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説-と思いきや、最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。
初読で「ええっ!」。再読で「ああっ!」。若い二人の恋愛物語と思ったら、意外な部分でビックリ。著者がミステリー作家なのだから、仕掛けがあると予測できたはずなのに……。

04年の単行本刊行時にも話題となり、昨年文庫化されると書店の宣伝活動や口コミの効果で、ほぼ月1回増刷がかかる典型的なロングセラーの様相に。

魅力はやはり驚きのトリック。「単純な話のようで、伏線が非常に緻密(ちみつ)。“ここにこんな意味があったのか”と発見できる、宝探しのような面白さも」と、担当編集者の石井一成さん。

舞台設定は80年代後半で、当時の風俗が盛り込まれるが、読者はそれらとは関係の薄い10、20代の女性がメーン。次に同年代の男性、その次にやっと、本格ミステリーの読者層である30、40代の男性が。可愛い表紙イラストや「仰天作」と謳(うた)うオビで、若い読者にアピール成功。ミステリーに馴染(なじ)みのない読者には新鮮な読書体験となりそうだが、たまに肝心な部分を読み落として「ごく普通の恋愛小説じゃないか」という人も。文庫版には丁寧な解説があるので、じっくり読めば分かるはず。この大矢博子さんの解説、万が一本文より先に読む人がいても、完全なネタバレにならないように配慮されていて、秀逸。

この“イニラブ”効果で、昨年11月に文庫化された同じ著者のタイムトラベルミステリー『リピート』もすでに5刷4万8千部と好調。この2冊、設定は異なるもののタロットカードに基づいていて、それぞれ表紙には該当するカードの英語名と写真が。しかも、共通する登場人物も発見! そんな細かな設定に、またもやビックリ……。
イニシエーション・ラブ  / 乾 くるみ
イニシエーション・ラブ
  • 著者:乾 くるみ
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:文庫(272ページ)
  • 発売日:2007-04-10
  • ISBN-10:4167732017
  • ISBN-13:978-4167732011
内容紹介:
僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて…。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説-と思いきや、最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2008年3月2日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
瀧井 朝世の書評/解説/選評
ページトップへ