書評
『イニシエーション・ラブ』(文藝春秋)
初読で「ええっ!」。再読で「ああっ!」。若い二人の恋愛物語と思ったら、意外な部分でビックリ。著者がミステリー作家なのだから、仕掛けがあると予測できたはずなのに……。
04年の単行本刊行時にも話題となり、昨年文庫化されると書店の宣伝活動や口コミの効果で、ほぼ月1回増刷がかかる典型的なロングセラーの様相に。
魅力はやはり驚きのトリック。「単純な話のようで、伏線が非常に緻密(ちみつ)。“ここにこんな意味があったのか”と発見できる、宝探しのような面白さも」と、担当編集者の石井一成さん。
舞台設定は80年代後半で、当時の風俗が盛り込まれるが、読者はそれらとは関係の薄い10、20代の女性がメーン。次に同年代の男性、その次にやっと、本格ミステリーの読者層である30、40代の男性が。可愛い表紙イラストや「仰天作」と謳(うた)うオビで、若い読者にアピール成功。ミステリーに馴染(なじ)みのない読者には新鮮な読書体験となりそうだが、たまに肝心な部分を読み落として「ごく普通の恋愛小説じゃないか」という人も。文庫版には丁寧な解説があるので、じっくり読めば分かるはず。この大矢博子さんの解説、万が一本文より先に読む人がいても、完全なネタバレにならないように配慮されていて、秀逸。
この“イニラブ”効果で、昨年11月に文庫化された同じ著者のタイムトラベルミステリー『リピート』もすでに5刷4万8千部と好調。この2冊、設定は異なるもののタロットカードに基づいていて、それぞれ表紙には該当するカードの英語名と写真が。しかも、共通する登場人物も発見! そんな細かな設定に、またもやビックリ……。
04年の単行本刊行時にも話題となり、昨年文庫化されると書店の宣伝活動や口コミの効果で、ほぼ月1回増刷がかかる典型的なロングセラーの様相に。
魅力はやはり驚きのトリック。「単純な話のようで、伏線が非常に緻密(ちみつ)。“ここにこんな意味があったのか”と発見できる、宝探しのような面白さも」と、担当編集者の石井一成さん。
舞台設定は80年代後半で、当時の風俗が盛り込まれるが、読者はそれらとは関係の薄い10、20代の女性がメーン。次に同年代の男性、その次にやっと、本格ミステリーの読者層である30、40代の男性が。可愛い表紙イラストや「仰天作」と謳(うた)うオビで、若い読者にアピール成功。ミステリーに馴染(なじ)みのない読者には新鮮な読書体験となりそうだが、たまに肝心な部分を読み落として「ごく普通の恋愛小説じゃないか」という人も。文庫版には丁寧な解説があるので、じっくり読めば分かるはず。この大矢博子さんの解説、万が一本文より先に読む人がいても、完全なネタバレにならないように配慮されていて、秀逸。
この“イニラブ”効果で、昨年11月に文庫化された同じ著者のタイムトラベルミステリー『リピート』もすでに5刷4万8千部と好調。この2冊、設定は異なるもののタロットカードに基づいていて、それぞれ表紙には該当するカードの英語名と写真が。しかも、共通する登場人物も発見! そんな細かな設定に、またもやビックリ……。
朝日新聞 2008年3月2日
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