選評

中原の虹(講談社)

  • 2017/09/25
中原の虹 (1) (講談社文庫) / 浅田 次郎
中原の虹 (1) (講談社文庫)
  • 著者:浅田 次郎
  • 出版社:講談社
  • 装丁:文庫(384ページ)
  • 発売日:2010-09-15
  • ISBN:4062767414

※書店によっては、在庫の無い場合や取り扱いの無い場合があります。あらかじめご了承ください。
※詳しい購入方法は、各ネット書店のサイトにてご確認ください。

吉川英治文学賞(第42回)

受賞作=浅田次郎「中原の虹」/他の選考委員=五木寛之、北方謙三、林真理子、平岩弓枝、宮城谷昌光、渡辺淳一/主催=吉川英治国民文化振興会/発表=「小説現代」二〇〇八年五月号

爽快な力作

快作である。清末から民国成立にかけての激動期を舞台に、「貧乏人こそは、実は選民」という普遍的な主題をめぐって、たくさんの人びとが壮大な人生模様を織りあげて行く。

その有様のいちいちがメリハリの利いた文体で、そしてまた筋の快適な進み行きで、読者の眼前にはっきりと浮かび上がってきて、大河小説をいとおしいと思いながら読む喜びを読者に与えてくれる。文体と物語と読者の読む速度が一体となって沸き上がるこの爽快感はとても貴重だ。

浅田小説のひとり語りはおもしろい。その人物の心の底にあるものを巧みに掬(すく)い上げるこの手法は、ここでも小説的時空を自在に往還して、英雄や義人や梟雄や王たちの魂の叫びを読者に訴える。それが作品に自由な気持のいい風を通している。

問題作かもしれない。たとえば、革命家で議院内閣制の確立を唱えた宋教仁(そうきょうじん)は袁世凱(えんせいがい)の放った刺客によって上海北(きた)駅で暗殺されたというのが通説だが、作者はこれを採っていない。ここで描かれている袁世凱はとても魅力的で、とても可愛い。しかもなかなか透徹した歴史観の持ち主でもある。作者は「皇帝にされてしまったような」この人物を愛してしまったらしく、すてきな新説を案じ出した。いったいどんな説か。それは直(じか)に読んでいただくしかないが、ここにも作者の小説的膂力(りょりょく)がみごとにあらわれていて、評者はすっかり袁世凱が好きになってしまった。



【この選評が収録されている書籍】
井上ひさし全選評 / 井上 ひさし
井上ひさし全選評
  • 著者:井上 ひさし
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(821ページ)
  • ISBN:4560080380

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中原の虹 (1) (講談社文庫) / 浅田 次郎
中原の虹 (1) (講談社文庫)
  • 著者:浅田 次郎
  • 出版社:講談社
  • 装丁:文庫(384ページ)
  • 発売日:2010-09-15
  • ISBN:4062767414

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初出メディア

小説現代

小説現代 2008年5月

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