書評
『犬と私の10の約束』(文藝春秋)
トヨザキ的評価軸:
「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
①とっても文章がへたですけど、私と気長につきあってください。②私がいつかまともな小説が書けると信じてください。③私にも酷評されれば傷つく心があることを忘れないでください。④書けないときは理由があります。⑤私の本をたくさん買ってください。難しい言葉はわからないけど、褒められればわかります。⑥私をたたかないで。本気になったらあなたの名前を使ったスカトロ小説くらい書けることを忘れないで。⑦私が年を取って武者小路実篤みたいなボケ文章を書くようになっても仲良くしてください。⑧一発屋の私は三年くらいしか小説家でいられません。だから今のうちにできるだけ私の本を読んでおいてください。⑨あなたには伊坂幸太郎もいるし、恩田陸もいます。でも、私にはあなたしかいません。⑩私の本が絶版になるとき、お願いです、ブックオフに売らないでそばに置いてください。
あー、渡辺淳一や都知事バージョンも作りてえ。
映画化されるくらい話題になった小説(もどき)なので、読んだ方が多いと思うんですけど、どうなんですか、実際の話。オデは稀代のケモノバカ一代を自負しておりますが、泣けませんでしたよ。未読の方のために粗筋を紹介いたしますと、これって泣いたことがない少女〈私〉がゴールデンレトリバーの子犬を飼うようになり、ソックスと名づけたその犬が十年後に死んで初めて泣くまでを、母親の死や幼なじみの恋とからめながら描いた物語なんですの。
「ずるいなー」って感心したのが、ソックスのモデルとおぼしき超ラブリィな犬の写真があっちゃこっちゃに挿入されてること。語り手〈私〉の頭の中身をそのまま投影したかのように幼稚な文章にキレそうになると、ソックス登場。で、怒りもクールダウン。その繰り返しで何とか最後まで読めましたが、もー、とにかくおためごかしな話なんですよ。一度も泣いたことがないって主人公の基本設定がウソくさけりゃ、眠るようにきれいに死んでいくソックスも生き物としてウソくせえの。可哀想なことにソックスは、小説世界内をリアルに生きる一匹の犬としては描いてもらえず、この本を売れるものにするための”泣き”の装置として利用されてるだけ。稀代のケモノバカとして、このような横暴を許しておくわけにはまいりません。
川口晴と文藝春秋は猛省しる!
【この書評が収録されている書籍】
「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
とにかくおためごかしな話。川口晴と文藝春秋よ、猛省しる!
いやー、もっと早く読んどけばよかったわ、『犬と私の10の約束』。すごく応用きくんだもん、というわけで、早速、この本の作者・川口晴さんのために10の約束を考えてみたんですの。①とっても文章がへたですけど、私と気長につきあってください。②私がいつかまともな小説が書けると信じてください。③私にも酷評されれば傷つく心があることを忘れないでください。④書けないときは理由があります。⑤私の本をたくさん買ってください。難しい言葉はわからないけど、褒められればわかります。⑥私をたたかないで。本気になったらあなたの名前を使ったスカトロ小説くらい書けることを忘れないで。⑦私が年を取って武者小路実篤みたいなボケ文章を書くようになっても仲良くしてください。⑧一発屋の私は三年くらいしか小説家でいられません。だから今のうちにできるだけ私の本を読んでおいてください。⑨あなたには伊坂幸太郎もいるし、恩田陸もいます。でも、私にはあなたしかいません。⑩私の本が絶版になるとき、お願いです、ブックオフに売らないでそばに置いてください。
あー、渡辺淳一や都知事バージョンも作りてえ。
映画化されるくらい話題になった小説(もどき)なので、読んだ方が多いと思うんですけど、どうなんですか、実際の話。オデは稀代のケモノバカ一代を自負しておりますが、泣けませんでしたよ。未読の方のために粗筋を紹介いたしますと、これって泣いたことがない少女〈私〉がゴールデンレトリバーの子犬を飼うようになり、ソックスと名づけたその犬が十年後に死んで初めて泣くまでを、母親の死や幼なじみの恋とからめながら描いた物語なんですの。
「ずるいなー」って感心したのが、ソックスのモデルとおぼしき超ラブリィな犬の写真があっちゃこっちゃに挿入されてること。語り手〈私〉の頭の中身をそのまま投影したかのように幼稚な文章にキレそうになると、ソックス登場。で、怒りもクールダウン。その繰り返しで何とか最後まで読めましたが、もー、とにかくおためごかしな話なんですよ。一度も泣いたことがないって主人公の基本設定がウソくさけりゃ、眠るようにきれいに死んでいくソックスも生き物としてウソくせえの。可哀想なことにソックスは、小説世界内をリアルに生きる一匹の犬としては描いてもらえず、この本を売れるものにするための”泣き”の装置として利用されてるだけ。稀代のケモノバカとして、このような横暴を許しておくわけにはまいりません。
川口晴と文藝春秋は猛省しる!
【この書評が収録されている書籍】
ALL REVIEWSをフォローする