書評

『ニューヨークのとけない魔法』(文藝春秋)

  • 2017/12/16
ニューヨークのとけない魔法 / 岡田 光世
ニューヨークのとけない魔法
  • 著者:岡田 光世
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:文庫(334ページ)
  • 発売日:2007-02-09
  • ISBN:4167717220
内容紹介:
世界一お節介で、おしゃべりで、図々しくて、でも憎めないニューヨーカーたち。東京と同じ孤独な大都会なのに、ニューヨークは人と人の心が触れ合う瞬間に満ちている。みんな切なくて人恋しくて、でも暖かいユーモアを忘れない。息苦しい毎日に心が固くなっていたら、ニューヨークの魔法にかかってみませんか。
帰宅した著者の夫が、うれしそうに話す。バス停で疲れた様子の女性と言葉を交わしたら、後で彼女が声をかけてきた。「You made my day.」(おかげで、いい日になったわ)。人とのささやかな触れ合いを、ニューヨークを舞台に描く本書。エッセー集ではあるが、極上の掌編のようないい話がつまっている。

NYに長年暮らした著者が、小粋な英語表現を紹介しながらつづった。単行本は他の版元から刊行されていたが、「読んでみて、自分でも驚くほど、忘れていた甘酸っぱい感情がパーッとわき上がってきました。それでぜひ文庫化したいと、お願いに行きました」と文庫担当編集者の池延朋子さん。

大きな仕掛けをしたわけではない。本書を気に入った書店員が独自にPOP(ポップ)を立て、目立つ棚に並べてきた結果、コンスタントに売れてきた。部数が伸びるのを見て「心のどこかで寂しい思いを抱えている人は意外と多いのでは、と著者と話していたんです」と池延さん。読者は20〜50代の女性がメーンだが、男性も多い。若い人のブログには「この本を読んで、自分も昨日、知らない人に声をかけてみました」といった報告も。

外国生活を記した本は、海外を礼賛し日本を批判する内容になることもあるが、著者はあくまでも公正。腹立たしい体験も率直に語り、恵まれない人々に偽善的な目を向けることもない。「泣けた」という声も多いが、決して安易に涙腺を刺激するわけではない。それでも人の心をほぐす力を持つということは、著者の中にある優しさやフェアな思いが、さりげなく全編に溶け込んでいるからだろう。
ニューヨークのとけない魔法 / 岡田 光世
ニューヨークのとけない魔法
  • 著者:岡田 光世
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:文庫(334ページ)
  • 発売日:2007-02-09
  • ISBN:4167717220
内容紹介:
世界一お節介で、おしゃべりで、図々しくて、でも憎めないニューヨーカーたち。東京と同じ孤独な大都会なのに、ニューヨークは人と人の心が触れ合う瞬間に満ちている。みんな切なくて人恋しくて、でも暖かいユーモアを忘れない。息苦しい毎日に心が固くなっていたら、ニューヨークの魔法にかかってみませんか。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2008年11月2日

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