書評

『幕末史』(新潮社)

  • 2018/03/04
幕末史  / 半藤 一利
幕末史
  • 著者:半藤 一利
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(512ページ)
  • 発売日:2012-10-29
  • ISBN-10:410127181X
  • ISBN-13:978-4101271811
内容紹介:
嘉永六年(一八五三)六月、ペリー率いる米艦隊が浦賀沖に出現。役人たちは周章狼狽する。やがて京の都はテロに震えだし、坂本龍馬も非業の死を遂げる。将軍慶喜は朝敵となり、江戸城は開城、戊辰戦争が起こる。新政府が樹立され、下野した西郷隆盛は西南戦争で城山の地に没す-。波乱に満ち溢れた二十五年間と歴史を動かした様々な男たちを、著者独自の切り口で、語り尽くす。
幕末の有名人というと篤姫や坂本龍馬、西郷隆盛ら、出来事というと日米和親条約や大政奉還などが浮かぶ。一人一人、ひとつひとつは説明できても相関関係を把握するのは結構大変。そんな一連の流れを分かりやすく語る入門書的な一冊がこちら。扱うのはペリー来航から西南戦争後までの25年間だ。

著者は『昭和史』『昭和史 戦後篇(へん)』(ともに平凡社刊)などのベストセラーを持つ。昨年12月の刊行後すぐに重版がかかり、以降好調をキープ。「歴史の語り部としての半藤さんの、信頼の高さを再認識しました」と担当編集者の笠井麻衣さん。

社会人向けの講義をまとめたもので、語り口調は親しみにあふれている。特徴は薩長を絶対的正義としない姿勢。笠井さんいわく「反薩長というより、公正に見ようとされている。残っている文献は勝った側から見たものが多いのですが、いろんな資料にあたって、視点が偏らないように気を配っていらっしゃいました」。当時の「皇国」に対する認識のズレ、国家づくりの際のグダグダなどが生々しく、人間臭く語られる。人物のキャラクターがよく分かるのも印象的で「歴史を作るのは人だから、ちゃんと人となりを伝えよう、と意識されていました」。

読者は30〜40代がメーン、続いて50代以上、男性が多い。宣伝部の町井孝さんによると「会津や長州、長岡といった地域の書店での反応がいい。“官軍”側も“賊軍”側も、読んでくださっているようです(笑い)」。

編集部には歴史ファンから細かな質問を記した手紙が届く。知識欲をかき立てる本書、歴史にうとい読み手にも、史実を知る面白さを教えてくれている。
幕末史  / 半藤 一利
幕末史
  • 著者:半藤 一利
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(512ページ)
  • 発売日:2012-10-29
  • ISBN-10:410127181X
  • ISBN-13:978-4101271811
内容紹介:
嘉永六年(一八五三)六月、ペリー率いる米艦隊が浦賀沖に出現。役人たちは周章狼狽する。やがて京の都はテロに震えだし、坂本龍馬も非業の死を遂げる。将軍慶喜は朝敵となり、江戸城は開城、戊辰戦争が起こる。新政府が樹立され、下野した西郷隆盛は西南戦争で城山の地に没す-。波乱に満ち溢れた二十五年間と歴史を動かした様々な男たちを、著者独自の切り口で、語り尽くす。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2009年2月15日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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