選評

『水滸伝』(集英社)

  • 2017/12/02
水滸伝 1 曙光の章  / 北方 謙三
水滸伝 1 曙光の章
  • 著者:北方 謙三
  • 出版社:集英社
  • 装丁:文庫(388ページ)
  • 発売日:2006-10-18
  • ISBN-10:408746086X
  • ISBN-13:978-4087460865
内容紹介:
十二世紀の中国、北宋末期。重税と暴政のために国は乱れ、民は困窮していた。その腐敗した政府を倒そうと、立ち上がった者たちがいた-。世直しへの強い志を胸に、漢たちは圧倒的な官軍に挑んでいく。地位を捨て、愛する者を失い、そして自らの命を懸けて闘う。彼らの熱き生きざまを刻む壮大な物語が、いま幕を開ける。第九回司馬遼太郎賞を受賞した世紀の傑作、待望の文庫版刊行開始。

司馬遼太郎賞(第9回)

受賞者=北方謙三「水滸伝」(全十九巻)/他の選考委員=陳舜臣、ドナルド・キーン、柳田邦男、養老孟司/主催=司馬遼太郎記念財団/発表=「遼」二〇〇六年冬季号

文体の冒険

私がまず一番に注目したことは、北方さんがこの大長編の文章で、ほとんど形容句というものを使っていないことです。

日本語のことを動詞文といいますが、この作品では名詞文といいますか、主語(名詞)と述語(動詞)の短い文を積み重ねていって、一個の文章ではなく、その総体によって、変化してゆく友情、男と女、親と子の感情を多面的に表現するという、文体上の大冒険をして、みごとに成功しているのです。それを十九巻やり続けた。

また巧みに原作をアレンジしたり、原作の一部分に過ぎなかった、たとえば経済問題に触れたりして、北方流解釈の新鮮さも魅力でした。

とくに司馬賞にふさわしいと思われるのは、作者のなかに、国家観というものがあって、国と民のかかわり、世の中の不正や不公平に対する激しい気迫というものを感じさせてくれます。それによって、梁山泊側と国側の対立というドラマティックな構造が実にうまく書けている。

まず文章、そして物語の作り方の新しい工夫、人物についてのエピソードを次々展開させる方法など、司馬作品と通い合うものがある、北方さんのこれまでの総決算といえる作品だと思います。

【この選評が収録されている書籍】
井上ひさし全選評 / 井上 ひさし
井上ひさし全選評
  • 著者:井上 ひさし
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(821ページ)
  • 発売日:2010-02-01
  • ISBN-10:4560080380
  • ISBN-13:978-4560080382
内容紹介:
2009年までの36年間、延べ370余にわたる選考会に出席。白熱の全選評が浮き彫りにする、文学・演劇の新たな成果。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

水滸伝 1 曙光の章  / 北方 謙三
水滸伝 1 曙光の章
  • 著者:北方 謙三
  • 出版社:集英社
  • 装丁:文庫(388ページ)
  • 発売日:2006-10-18
  • ISBN-10:408746086X
  • ISBN-13:978-4087460865
内容紹介:
十二世紀の中国、北宋末期。重税と暴政のために国は乱れ、民は困窮していた。その腐敗した政府を倒そうと、立ち上がった者たちがいた-。世直しへの強い志を胸に、漢たちは圧倒的な官軍に挑んでいく。地位を捨て、愛する者を失い、そして自らの命を懸けて闘う。彼らの熱き生きざまを刻む壮大な物語が、いま幕を開ける。第九回司馬遼太郎賞を受賞した世紀の傑作、待望の文庫版刊行開始。

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初出メディア

遼

遼 2006年冬季号

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