解説

『吾輩は猫である』(新潮社)

  • 2018/03/26
吾輩は猫である / 夏目 漱石
吾輩は猫である
  • 著者:夏目 漱石
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(610ページ)
  • ISBN:4101010013
内容紹介:
治期の文学者、夏目漱石の最初の長編小説。初出は「ホトトギス」[1905(明治38)年〜1906(明治39)年]。1905年10月上篇が刊行されると20日間で売り切れたという。中学教師の珍野苦沙弥の家に飼われる、名前のない猫「吾輩」の目で、珍野一家とその周囲に集まる人々や「太平の逸民」の人間模様を鋭く風刺し、笑いとばす。落語のような語り口に乗せたユーモアは多くの読者を集め、夏目漱石の小説家としての地位を確立する記念碑的な作品となった。

「寄席がはねたあとの様に座敷は淋しくなった」

英文学を外国人が研究して何になるか。それを学校で教えて、ますます何になるか、そのうえなぜか四六時中「探偵」に見張られている。

憂鬱症と癇癪(かんしゃく)の間を往還して、帰国以来怏々(おうおう)としてたのしまなかった漱石は、1905(明治38)年、高浜虚子に勧められて『吾輩は猫である』を書いた。漱石の内部にわだかまっていたユーモアと批評精神は、ここに活路を見出し、心はひさびさ開かれた。

が、日露戦争後の世の中では、みなが存分に自我を張る。個人は露出してこすれ合い、社会の雨風に打たれもする。

「呑気と見える人々も、心の底を叩いてみると、どこか悲しい音がする」

20世紀をえがいた漱石は、無意識のうちにすでに現代文学の作家であった。

内容解説

中学教師・苦沙弥先生の書斎に集まる明治の俗物紳士たちの語る珍談・奇譚、出来(しゅったい)する小事件の数かずを、先生の家に迷いこんで飼われている猫の眼から風刺的に描く、漱石最初の長編小説。江戸落語の笑いの文体と、英国の男性社交界風の皮肉な雰囲気と、漱石の英文学の教養とが渾然(こんぜん)一体となり、作者の饒舌の才能が遺憾なく発揮される。痛烈かつ愉快な文明批評にとむ古典的快作。

【この解説が収録されている書籍】
新潮文庫20世紀の100冊  / 関川 夏央
新潮文庫20世紀の100冊
  • 著者:関川 夏央
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:新書(213ページ)
  • 発売日:2009-04-00
  • ISBN:4106103095
内容紹介:
文学作品は、時代から独立して存在しているわけではない。その作品が書かれ、受け入れられ、生き残ってきたことには理由がある。与謝野晶子、夏目漱石、森鴎外などの古典から、谷崎潤一郎、三島由紀夫などの昭和の文豪、現代の村上春樹、宮部みゆきまで、1年1冊、合計100冊の「20世紀の名著」を厳選。希代の本読み、関川夏央による最強のブックガイド。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

吾輩は猫である / 夏目 漱石
吾輩は猫である
  • 著者:夏目 漱石
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(610ページ)
  • ISBN:4101010013
内容紹介:
治期の文学者、夏目漱石の最初の長編小説。初出は「ホトトギス」[1905(明治38)年〜1906(明治39)年]。1905年10月上篇が刊行されると20日間で売り切れたという。中学教師の珍野苦沙弥の家に飼われる、名前のない猫「吾輩」の目で、珍野一家とその周囲に集まる人々や「太平の逸民」の人間模様を鋭く風刺し、笑いとばす。落語のような語り口に乗せたユーモアは多くの読者を集め、夏目漱石の小説家としての地位を確立する記念碑的な作品となった。

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