解説

『刺青・秘密』(新潮社)

  • 2018/09/06
刺青・秘密 / 谷崎 潤一郎
刺青・秘密
  • 著者:谷崎 潤一郎
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(273ページ)
  • 発売日:1969-08-05
  • ISBN:4101005036
内容紹介:
肌をさされてもだえる人の姿にいいしれぬ愉悦を感じる刺青師清吉が年来の宿願であった光輝ある美女の背に蜘蛛を彫りおえた時、今度は……。性的倒錯の世界を描き、美しいものに征服される喜び、美即ち強きものである作者独自の美の世界が顕わされた処女作「刺青」。作者唯一の告白書にして懺悔録である自伝小説「異端者の悲しみ」ほかに「少年」「秘密」など、初期の短編全七編を収める。

青年の「醗酵(はっこう)する妖しい悪夢」が「甘美にして芳烈なる芸術」に転じる時

1910(明治43)年、谷崎潤一郎は24歳だった。生家は没落し、学費を親戚と親友にあおぐ東京帝大の学生だった。しかるに彼は法科に進まなかった。出世に縁のない国文科を選び、そのうえ授業には出席しなかった。内心に嵐を荒れ狂わせて放蕩の限りを尽す彼を、友人たちは「剽軽者(ひょうきんもの)」「呑気な男」と見ていた。

6月末の梅雨の晴れ間、結核の妹が死んだ。彼女は最後にこういった。「あああ、あたいはほんとに詰まらないな。15や16で死んでしまうなんて、……だけど私(あたい)は苦しくも何ともない。死ぬなんてこんなに楽な事なのか知ら……」

その年の秋、谷崎潤一郎は事実上の処女作「刺青」を書いた。朝日に燦爛(さんらん)たる背中を誇らかにさらす若い女には、不運に早世したその妹の面影がたしかに宿っていた。

内容解説

肌をさされて痛みにもだえる人の姿に、いいしれぬ愉悦を感じる刺青師・清吉は、年来の宿願だった光輝ある美女の背に蜘蛛を彫りおえた.そのあとには……。

美すなわち強者、そしてその美しいものに征服される喜び、作者独自の性的倒錯の世界をえがききった処女作「刺青」。作者唯一の告白書にして懺悔(ざんげ)録である自伝小説「異端者の悲しみ」。ほか「少年」「秘密」など、初期短編全7編。

【この解説が収録されている書籍】
新潮文庫20世紀の100冊  / 関川 夏央
新潮文庫20世紀の100冊
  • 著者:関川 夏央
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:新書(213ページ)
  • 発売日:2009-04-00
  • ISBN:4106103095
内容紹介:
文学作品は、時代から独立して存在しているわけではない。その作品が書かれ、受け入れられ、生き残ってきたことには理由がある。与謝野晶子、夏目漱石、森鴎外などの古典から、谷崎潤一郎、三島由紀夫などの昭和の文豪、現代の村上春樹、宮部みゆきまで、1年1冊、合計100冊の「20世紀の名著」を厳選。希代の本読み、関川夏央による最強のブックガイド。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

刺青・秘密 / 谷崎 潤一郎
刺青・秘密
  • 著者:谷崎 潤一郎
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(273ページ)
  • 発売日:1969-08-05
  • ISBN:4101005036
内容紹介:
肌をさされてもだえる人の姿にいいしれぬ愉悦を感じる刺青師清吉が年来の宿願であった光輝ある美女の背に蜘蛛を彫りおえた時、今度は……。性的倒錯の世界を描き、美しいものに征服される喜び、美即ち強きものである作者独自の美の世界が顕わされた処女作「刺青」。作者唯一の告白書にして懺悔録である自伝小説「異端者の悲しみ」ほかに「少年」「秘密」など、初期の短編全七編を収める。

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