書評

『婦系図』(新潮社)

  • 2018/05/21
婦系図 / 泉 鏡花
婦系図
  • 著者:泉 鏡花
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(428ページ)
  • 発売日:2000-06-29
  • ISBN-10:4101056048
  • ISBN-13:978-4101056043
内容紹介:
時は明治。有名な大学教授・酒井の下で修行する文学士・早瀬主税が密かに所帯を持っていたのは、芸者あがりのお蔦であった。ところが酒井の愛娘に縁談が持ち上がり、お蔦との関係を師に責められた主税は別離を決意、お蔦は泣く泣く身を引いた。これが後に舞台で満場の紅涙を絞った「湯島の白梅」の名場面である。純愛の難しかった時代の、お蔦を始め女性たちの健気な愛が胸を打つ。

「俺を棄てる歟(か)、婦(おんな)を棄てる歟(か)」。”封建的師弟関係”の精華

1899(明治32)年、硯友社(硯友社)の新年会で25歳の泉鏡花は、神楽坂の芸妓桃太郎こと17歳の伊藤すずを知った。1903年、友人が工面してくれた金で鏡花はすずを身請(みう)けし、神楽坂下の借家に同棲した。

しかし6歳年長の師・尾崎紅葉は、芸妓を落籍(ひか)すなど身のほどを知らぬ、それで身が立つなら立ててみろ、「俺を棄てる歟、婦をすてる歟」と江戸前のたんかで叱責した。「婦を棄てます」と泣いて誓った鏡花はいったんすずを離別したが、半年後、紅葉が35歳の若さで病没すると今度は正式に妻として迎え、生涯をともにすごした。

東京朝日新聞に入社した漱石が近代的職業作家として出発した1907年、鏡花は『婦系図』という古典的小説を書き、この事件を自分の内部で歴史に転換した。

内容解説

時は明治。有名な大学教授・酒井の下で修行する文学士・早瀬主税(ちから)が密かに所帯を持っていたのは、芸者あがりのお蔦であった。ところが酒井の愛娘に縁談が持ち上がり、お蔦との関係を師に責められた主税は別離を決意、お蔦は泣く泣く身を引いた。これが後に舞台で満場の紅涙を絞った「湯島の白梅」の名場面である。純愛の難しかった時代の、お蔦を始め女性たちの健気な愛が胸を打つ。

【この書評が収録されている書籍】
新潮文庫20世紀の100冊  / 関川 夏央
新潮文庫20世紀の100冊
  • 著者:関川 夏央
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:新書(213ページ)
  • 発売日:2009-04-00
  • ISBN-10:4106103095
  • ISBN-13:978-4106103094
内容紹介:
文学作品は、時代から独立して存在しているわけではない。その作品が書かれ、受け入れられ、生き残ってきたことには理由がある。与謝野晶子、夏目漱石、森鴎外などの古典から、谷崎潤一郎、三島由紀夫などの昭和の文豪、現代の村上春樹、宮部みゆきまで、1年1冊、合計100冊の「20世紀の名著」を厳選。希代の本読み、関川夏央による最強のブックガイド。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

婦系図 / 泉 鏡花
婦系図
  • 著者:泉 鏡花
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(428ページ)
  • 発売日:2000-06-29
  • ISBN-10:4101056048
  • ISBN-13:978-4101056043
内容紹介:
時は明治。有名な大学教授・酒井の下で修行する文学士・早瀬主税が密かに所帯を持っていたのは、芸者あがりのお蔦であった。ところが酒井の愛娘に縁談が持ち上がり、お蔦との関係を師に責められた主税は別離を決意、お蔦は泣く泣く身を引いた。これが後に舞台で満場の紅涙を絞った「湯島の白梅」の名場面である。純愛の難しかった時代の、お蔦を始め女性たちの健気な愛が胸を打つ。

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