解説

『ヰタ・セクスアリス』(新潮社)

  • 2018/07/25
ヰタ・セクスアリス / 森 鴎外
ヰタ・セクスアリス
  • 著者:森 鴎外
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(182ページ)
  • ISBN-10:4101020035
  • ISBN-13:978-4101020037
内容紹介:
哲学講師の金井湛君は、かねがね何か人の書かない事を書こうと思っていたが、ある日自分の性欲の歴史を書いてみようと思いたつ。六歳の時に見た絵草紙の話に始り、寄宿舎で上級生を避け、窓の外へ逃げた話、硬派の古賀、美男の児島と結んだ三角同盟から、はじめて吉原に行った事まで科学者的な冷静さで淡々と描かれた自伝体小説であり掲載誌スバルは発禁となって世論をわかせた。

早熟な天才が、たんにそれだけで終らぬための抗抵の軌跡

1909(明治42)年2月から森鴎外は、突然再び小説を書き出した。

「夏目金之助君」の小説に「技癢(ぎよう)」を感じた。流行の自然主義小説には感心しなかったが「面白がることは非常に面白がった」。さまざまな理由はあるにしろ、2年前の晩秋、陸軍軍医総監という最高位に就任した事実は見逃せない。

1881年、東京大学医科大学を卒業したとき彼は19歳だった。卒業生28人の平均年齢25歳、成績8位の鴎外より席次ひとつ下の小池正直は26歳だった。その小池が鴎外の前任総監である。長く違和を味わいつづけた年次と年齢のギャップから、鴎外は46歳にして解放された。そうして書いた『ヰタ・セクスアリス』は発禁になったが、おのれの後半生のありかたを作品に示した彼は意に介さなかった。

内容解説

哲学講師の金井湛(しずか)君は、かねて何か人の書かないことを書こうと思っていたが、ある日自分の性欲の歴史を書いてみようと思いたつ。6歳の時に見た絵草紙の話に始まり、寄宿舎で上級生を避け、窓の外へ逃げた話、硬派の古賀、美男の児島と結んだ三角同盟から、初めての吉原行の経緯まで。科学者の冷静さで淡々と描いたこの自伝体小説の掲載誌「スバル」は発禁となり、世論をわかせた。

【この解説が収録されている書籍】
新潮文庫20世紀の100冊  / 関川 夏央
新潮文庫20世紀の100冊
  • 著者:関川 夏央
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:新書(213ページ)
  • 発売日:2009-04-00
  • ISBN-10:4106103095
  • ISBN-13:978-4106103094
内容紹介:
文学作品は、時代から独立して存在しているわけではない。その作品が書かれ、受け入れられ、生き残ってきたことには理由がある。与謝野晶子、夏目漱石、森鴎外などの古典から、谷崎潤一郎、三島由紀夫などの昭和の文豪、現代の村上春樹、宮部みゆきまで、1年1冊、合計100冊の「20世紀の名著」を厳選。希代の本読み、関川夏央による最強のブックガイド。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

ヰタ・セクスアリス / 森 鴎外
ヰタ・セクスアリス
  • 著者:森 鴎外
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(182ページ)
  • ISBN-10:4101020035
  • ISBN-13:978-4101020037
内容紹介:
哲学講師の金井湛君は、かねがね何か人の書かない事を書こうと思っていたが、ある日自分の性欲の歴史を書いてみようと思いたつ。六歳の時に見た絵草紙の話に始り、寄宿舎で上級生を避け、窓の外へ逃げた話、硬派の古賀、美男の児島と結んだ三角同盟から、はじめて吉原に行った事まで科学者的な冷静さで淡々と描かれた自伝体小説であり掲載誌スバルは発禁となって世論をわかせた。

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