書評
『アマルティア・センの世界―経済学と開発研究の架橋』(晃洋書房)
グローバル化と共に、南北間で所得格差がかつてない広がりを見せつつある。センが共感をもって迎えられたのは、現代における南側の「貧困」のありようにリアルに迫ったからだ。貧困とは、社会基盤の貧しさゆえ、同じ所得を得たとしても先進国民になしうることができない人々の状態というのである。
こうしたセンの主張については『貧困の克服−アジア発展の鍵は何か』(集英社新書)に平易に説かれているが、その先の著書を読もうとすると、社会選択論にかんする超抽象的な議論から貧困の具体的な計測基準まで、あまりの専門性にめまいを覚えてしまう。
本書は市場経済論・社会選択論・不平等論・開発論・インド論・ジェンダー論などを専攻する十人の日本人による論文集。専門性の背後にあるセンの全体像を浮かび上がらせようという試みがありがたい。なかでも、センは道徳哲学者アダム・スミスの再来なのだという指摘には得心がいく。
こうしたセンの主張については『貧困の克服−アジア発展の鍵は何か』(集英社新書)に平易に説かれているが、その先の著書を読もうとすると、社会選択論にかんする超抽象的な議論から貧困の具体的な計測基準まで、あまりの専門性にめまいを覚えてしまう。
本書は市場経済論・社会選択論・不平等論・開発論・インド論・ジェンダー論などを専攻する十人の日本人による論文集。専門性の背後にあるセンの全体像を浮かび上がらせようという試みがありがたい。なかでも、センは道徳哲学者アダム・スミスの再来なのだという指摘には得心がいく。
朝日新聞 2004年7月11日
朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。
ALL REVIEWSをフォローする


































