ソ連の崩壊によってマルクス経済学が退潮し、経済学の主流には新古典派が定着した。以後、論争が起きるとしても、基礎となる教科書的な知識は盤石だとされている。景気対策として構造改革か反デフレ政策しかないかのように喧伝されたのもそのせいだ。
けれども景気ひとつとっても、それら二つの立場だけで説明されたとは感じない人も少なくない。それは、ひるがえって新古典派経済学そのものに対する疑念を引き起こす。本書は「進化」をキーワードに、複雑系や経済思想などの新たな知見を駆使しつつ、主流派を超克し代替的な経済像を打ち立てようとする「進化経済学」の最新の論文集である。
経済や制度の進化についての思弁的考察にとどまらず、地域通貨の発生にかんするシミュレーションや企業および野球選手の寿命についてのデータ分析など多士済々で、経済学においていまだ瑞々しい思考が可能であることを示している。