書評

『ユーロ消滅?――ドイツ化するヨーロッパへの警告』(岩波書店)

  • 2017/07/18
ユーロ消滅?――ドイツ化するヨーロッパへの警告 / ウルリッヒ・ベック
ユーロ消滅?――ドイツ化するヨーロッパへの警告
  • 著者:ウルリッヒ・ベック
  • 翻訳:島村 賢一
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(144ページ)
  • 発売日:2013-02-27
  • ISBN-10:4000254189
  • ISBN-13:978-4000254182
内容紹介:
ユーロ崩壊の危機に対して、経済大国ドイツはいかに行動すべきか。債務国の予算決定に介入して主権を奪い、ユーロ圏から切り離すことでEUや欧州の分断へと踏み出しかねないドイツ主導の権力地図に警鐘を鳴らし、危機を克服しながら欧州の連帯と統合を強化する方策を提起する。欧州共通の金融取引税、救済基金、社会保障等を政策論だけではなく、市民の視点からも構想したシナリオ。

危機への岐路に立つメルケル

ユーロ危機を国家債務危機ととらえた経済学者は「資本の理解者」となって貧者に新自由主義を強いると著者は指摘する。債務危機ではなく、欧州危機なのであって「欧州が排外主義や暴力に回帰せずに、根本的な変化や多大な挑戦に対して解答を見いだせる」かどうかが問題の核心だという。

著者は、現在の欧州はマキャヴェッリが経験した15~16世紀以上の危機に直面しているのであり、「革命前夜のような状況」と認識する。独首相メルケルを、『君主論』の戦略家になぞらえ「メルキァヴェッリ」と称し、これまでの「懐柔戦略としての躊躇(ちゅうちょ)」的な手法をたたえているが、「ドイツによるヨーロッパ」が全面的になると、限界に近づくと危惧し、それを避けるための「公平」「均衡」など四つの原則を提唱する。

現在の危機に対処するには、国民国家的世界観を変え、「ルールを守る小政治」から「ルールを変える大政治」へと転換する必要がある。欧州連合を進めていこうとする著者によれば、「慣れ親しんだルーティンを粉々にする例外の事態」と通常の事態が区別できない「リスク社会」において、秩序の転換には二つのシナリオがある。一つはヘーゲル的、もう一つはカール・シュミット的なそれだ。前者は民主主義が国家の枠を超えて生き残り、後者は独裁への道が待っている。

危機のさなかに、ドイツは意図せずしてヨーロッパの中心に躍り出た。カエサル、ナポレオン、ヒトラーらが強大な軍事力を以(もっ)てしてもなしえなかったことを、メルキァヴェッリが“壮大な社会実験”として行っている。翻って、我が国のそれといえば、ベースマネーを2倍に増やすことだという。なぜ日本は「近代の勝利の副次的作用としてのグローバルなリスク」に無頓着なのだろうか、この点を解明しないと日本は周回遅れのトップランナーになりさがるだろう。
ユーロ消滅?――ドイツ化するヨーロッパへの警告 / ウルリッヒ・ベック
ユーロ消滅?――ドイツ化するヨーロッパへの警告
  • 著者:ウルリッヒ・ベック
  • 翻訳:島村 賢一
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(144ページ)
  • 発売日:2013-02-27
  • ISBN-10:4000254189
  • ISBN-13:978-4000254182
内容紹介:
ユーロ崩壊の危機に対して、経済大国ドイツはいかに行動すべきか。債務国の予算決定に介入して主権を奪い、ユーロ圏から切り離すことでEUや欧州の分断へと踏み出しかねないドイツ主導の権力地図に警鐘を鳴らし、危機を克服しながら欧州の連帯と統合を強化する方策を提起する。欧州共通の金融取引税、救済基金、社会保障等を政策論だけではなく、市民の視点からも構想したシナリオ。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2013年5月12日

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