書評

『さるとかに』(チャイルド本社)

  • 2020/04/25
さるとかに / 小沢 正
さるとかに
  • 著者:小沢 正
  • 出版社:チャイルド本社
  • 装丁:単行本(32ページ)
  • 発売日:2007-09-01
  • ISBN-10:4805423935
  • ISBN-13:978-4805423936
内容紹介:
ある日、かにとさるはおむすびと柿の種を交換しました。種を大切に育てた甲斐あってたくさんの実をつけましたが、かには木に登ることができません。そこにさるがやってきて…。1979年刊の第2版。

本屋のおじさん大活躍

「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ~。いよいよかいてんですよ~」

毎日「いよいよ開店」するのは、息子の本屋さんだ。畳の上に、絵本をきっちりびっしりタイルのように並べて、彼の扮する「本屋のおじさん」は待っている。

全部が何度も読んだことのある本だけに、この本屋のおじさんは、なかなか詳しい。

「『桃太郎』をください」では、ストレートすぎておもしろくないので、「あのー、鬼をやっつける話を探しているんですけど」と水をむけると「はいはい、これと、これね」と言って、『ももたろう』『いっすんぼうし』を出してきた。そういえば、一寸法師も鬼をやっつける話だった。

「さんびきのナントカ……」を探してもらうと、今度は三冊。『さんびきのくま』『さんびきのこぶた』『三びきのやぎのがらがらどん』だ。

「今日は、悪いヤツが出てくる話が読みたいんですけど」と言うと、『さるとかに』。表紙からしてインパクトのある一冊だが、再話のほうも容赦なくなされていて、迫力がある。

近ごろの「昔話」の絵本は、子どもへの配慮からか、残酷なシーンが極力マイルドになっているものが多い。鬼退治の話だって、鬼が死ぬことは滅多になく、たいていは「ごめんなさい」とあやまって終わりだ。やっつける方法も、「こちょこちょ」なんていうのまであって、驚いたことがある。

もちろん、むやみに残酷である必要はないけれど、小手先のオブラート包みは、せっかくの昔話の魅力をそぐことも多いように思われる。その点、この『さるとかに』は、昔話のダイナミックさが伝わってきて、とてもいい。

初めて読んだときには、息子はちょっと引いていた。なにせ最後が「さるはぺしゃっとつぶれて、きゅっとしんでしまいましたとさ。めでたしめでたし」である。そのさるの所業も、そうとうひどい。

「悪いヤツっていうのは、このさるですか?それともかにですか?」と聞くと、「まあ、さるなんですけどね。……でもどっちもわるいようなはなしだと、わたしはおもうんですよねえ」と歯切れが悪い。さるの殺されかたが、よほど恐かったとみえる。なにもそこまで、という気持ちが消えないようだ。それはそれで、感じかたの一つだろう。

簡単なリクエストが、意外と通じないこともある。

「雨がふっている本は、ありますか?」

『あめのひのおるすばん』『かみなりになったごろべえ』あたりを期待していたのだが、なかなか出てこない。

「あの、にたようなものでもいいですか」

本屋のおじさんが、もじもじしながら差し出した一冊。それは、表紙にペンギンの絵が描かれた『シャワー』という本だった。

【この書評が収録されている書籍】
かーかん、はあい 子どもと本と私 / 俵万智
かーかん、はあい 子どもと本と私
  • 著者:俵万智
  • 出版社:朝日新聞出版
  • 装丁:文庫(224ページ)
  • 発売日:2012-05-08
  • ISBN-10:4022646667
  • ISBN-13:978-4022646668
内容紹介:
6歳になった今も、息子は絵本を持って母のもとへやってくる――。子育てをする歌人が、子どものために選び、自身も心を揺り動かされた絵本48冊を紹介したエッセイ。母親世代にも懐かしい不朽の名作から、図鑑、ことば遊び、シュールなものまで、幅広く選んでいる。成長に応じた絵本探しの参考として、また母と子のあたたかな交流を描いた本として楽しい一冊。単行本全2巻を1冊にまとめて文庫化。

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さるとかに / 小沢 正
さるとかに
  • 著者:小沢 正
  • 出版社:チャイルド本社
  • 装丁:単行本(32ページ)
  • 発売日:2007-09-01
  • ISBN-10:4805423935
  • ISBN-13:978-4805423936
内容紹介:
ある日、かにとさるはおむすびと柿の種を交換しました。種を大切に育てた甲斐あってたくさんの実をつけましたが、かには木に登ることができません。そこにさるがやってきて…。1979年刊の第2版。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2007年7月25日

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