書評

『キリスト教とローマ帝国』(新教出版社)

  • 2017/07/04
キリスト教とローマ帝国 / ロドニー・スターク
キリスト教とローマ帝国
  • 著者:ロドニー・スターク
  • 翻訳:穐田 信子
  • 出版社:新教出版社
  • 装丁:単行本(306ページ)
  • 発売日:2014-09-19
  • ISBN-10:4400227235
  • ISBN-13:978-4400227236
内容紹介:
帝国の辺境で生じた新興宗教が、短期間に多くの信徒を獲得し、ローマ帝国を席巻できたのはいったいなぜか。古代史の最大の疑問に対して、アメリカの代表的な宗教社会学者がカルトや新興宗教の… もっと読む
帝国の辺境で生じた新興宗教が、短期間に多くの信徒を獲得し、ローマ帝国を席巻できたのはいったいなぜか。古代史の最大の疑問に対して、アメリカの代表的な宗教社会学者がカルトや新興宗教の消長を分析する際に有効な手法を応用して、その秘密に迫った話題作。初代教会における人々のネットワーク構築への着目はその後の議論にも大きな影響を与えた。1996年の原書はピューリッツァー賞の候補ともなった。待望の邦訳。

初期信徒は中・上流の都市住民

ここ数年、不思議に思っていたことが二つある。一つは1215年にローマ・キリスト教会が利子率を容認してわずか50年後に生まれた詩人ダンテは、なぜお金を「神の僕(しもべ)をして道を誤らせる花」と言い、これに執着する人を「強欲」だと批判したのか。

第二に、キリスト教は霊魂を資本主義はモノを「蒐集(しゅうしゅう)」することで社会秩序を維持してきたが、ローマ・カトリックと資本主義との間には一体どういう関係があるのか。

本書を読んで、二つの疑問の答えが実は同じことに起因するのだとわかった。

キリストの死から3日後、キリスト教はユダヤ教内の「セクト」から新しい「カルト」運動へと変化したとされる。近年の新約聖書歴史学の流れでは、その基盤を「中流ないし上流階級」に求めている。俗に言われる庶民の「奇跡的な」集団改宗があったわけではなく「離散ユダヤ人にかぎらず(略)4世紀まではユダヤ人が大きな源としてキリスト教徒への改宗者を供給し」、紀元40年の帝国内に1千人(人口比0・002%)だったキリスト教徒は350年には3400万人(同56・5%)へと急速に普及した。

都市に住んだ上流層であったキリスト教徒の中から、貨幣経済化が進んだ13世紀以降、資本家になって成功した者が多数出たと考えられる。「蒐集家たちの層序の頂点」に立つ支配層はキリスト教徒であり、同時に資本家でもある。彼らが「命も金も」と要求したことで「蒐集」は際限のない「強欲」となった。

本書によると、キリスト教がギリシャ・ローマの多神教に勝利したのは「カルト過多」な多神教の神殿が「絢爛(けんらん)豪華」となり、維持するのに金がかかったせいだ。と同時にキリスト教の「教義」が危機や苦難に打ち勝つすべを教えたからだと著者は強調する。

モノ的には超「過剰」、しかも「教義」はない日本。その将来が心配になってきた。
キリスト教とローマ帝国 / ロドニー・スターク
キリスト教とローマ帝国
  • 著者:ロドニー・スターク
  • 翻訳:穐田 信子
  • 出版社:新教出版社
  • 装丁:単行本(306ページ)
  • 発売日:2014-09-19
  • ISBN-10:4400227235
  • ISBN-13:978-4400227236
内容紹介:
帝国の辺境で生じた新興宗教が、短期間に多くの信徒を獲得し、ローマ帝国を席巻できたのはいったいなぜか。古代史の最大の疑問に対して、アメリカの代表的な宗教社会学者がカルトや新興宗教の… もっと読む
帝国の辺境で生じた新興宗教が、短期間に多くの信徒を獲得し、ローマ帝国を席巻できたのはいったいなぜか。古代史の最大の疑問に対して、アメリカの代表的な宗教社会学者がカルトや新興宗教の消長を分析する際に有効な手法を応用して、その秘密に迫った話題作。初代教会における人々のネットワーク構築への着目はその後の議論にも大きな影響を与えた。1996年の原書はピューリッツァー賞の候補ともなった。待望の邦訳。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2014年12月07日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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