前書き

『手話通訳者になろう』(白水社)

  • 2019/09/25
手話通訳者になろう / 木村 晴美,岡 典栄
手話通訳者になろう
  • 著者:木村 晴美,岡 典栄
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(176ページ)
  • 発売日:2019-08-27
  • ISBN:456009716X
内容紹介:
手話言語条例の制定が相次ぎ、手話通訳の需要が高まっています。各分野で活躍する手話通訳者にインタビューし、その魅力を探ります。
各地の自治体で手話言語条例の制定が相次ぎ、手話通訳の需要が高まっています。手話通訳とはなにか、そして手話通訳者にスポットを当てた本書の魅力を、NHK手話ニュースでおなじみの木村晴美さん、ろう教育の第一人者である岡典栄さんがご紹介します。

教育・医療・スポーツなどの現場で需要急増!「手話通訳」の魅力

みなさんは手話通訳者を見たことがありますか。

2011年3月11日におきた東日本大震災の2日後から、総理大臣官邸の記者会見に手話通訳がつくようになったので、テレビのニュース画面で見かけた人もいるかもしれません。新しい元号「令和」の発表の記者会見にも、手話通訳者がいました。また、気象庁の緊急記者会見にも手話通訳をつける試行が始まりました。

手話通訳はだれのためのものでしょうか。手話通訳は、声で話される日本語(音声日本語)が聞き取れない人たちに、話されていることが理解できるように、手話という視覚言語に代えて伝えるものなので、耳が聞こえない人たちのためだということができるでしょう。

しかし、通訳というのは一方通行だけのものではありません。手話から日本語への通訳も必要です。それは英語と日本語の間の通訳であれば、日英通訳だけでなく、英日通訳が必要な場面があることからもすぐに気がつくと思います。むしろみなさんがおなじみなのは、外国人が言うことを日本語にしてくれる英日通訳ではないでしょうか。手話から日本語にしてくれる手話通訳者がほしい、と思ったことがなかったのはどうしてでしょうか? そういうことも考えながら、この本では日本語と日本手話の間の通訳というしごとがどういうものなのか、一緒に見ていきたいと思います。

日本手話と書きましたが、手話は世界共通ではありません。日本では日本手話が、アメリカではアメリカ手話が話されています。なので、日本手話とアメリカ手話の間の通訳が必要になる場合ももちろんあります。通訳というしごとにおいては、通常どちらか一方の言語が母語であることが望ましいので、手話言語同士の通訳であれば、どちらかの手話が母語である人、つまりろう者が通訳をすることが望ましいといえます。耳が聞こえなくても、通訳のしごとをする人たちがいるのです。そういう人たちがどのような場面で活躍しているのかは、第三章の「ろう通訳」のところを見てください。

手話通訳というのは聴覚障害という障害を持った人たちを支援する、福祉の目的だけのものではありません。日本語と日本手話という二つの言語の間を取り持つ、ほかのどんな通訳とも共通した役割を持った、通訳という大きな職種の中のひとつです。ですから通訳のしごとに関係することがまずあって、その上でさらに手話言語と音声言語、あるいは手話言語同士の通訳といった個別の事情を考えるべきです。ですから、耳の聞こえないかわいそうな人たちを助けたい、という気持ちではなく、二つの言語の間を行き来してコミュニケーションを成立させる言語のエキスパートになるのだという意気込みが必要だと思います。

第1章は、手話にはじめて触れる人に向けて、手話がどんな特徴をもつことばなのかを簡単に説明しました。手話の学び方、通訳者にどうやったらなれるのかは第2章を読んでください。第3章では、さまざまな分野の第一線で活躍する現役の手話通訳者の方々にインタビューをして、手話通訳のしごとの魅力について語ってもらいました。

手話通訳というしごとを、あなたのこれからの職業の選択肢の中にぜひ加えてください。これから手話通訳に関わる人たちが増えることを願っています。

[書き手]
木村晴美(国立障害者リハビリテーションセンター学院手話通訳学科教官、NHK手話ニュース845キャスター)
岡典栄(明晴学園国際部長、手話通訳士)
手話通訳者になろう / 木村 晴美,岡 典栄
手話通訳者になろう
  • 著者:木村 晴美,岡 典栄
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(176ページ)
  • 発売日:2019-08-27
  • ISBN:456009716X
内容紹介:
手話言語条例の制定が相次ぎ、手話通訳の需要が高まっています。各分野で活躍する手話通訳者にインタビューし、その魅力を探ります。

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