書評

『スーパーカブは、なぜ売れる』(集英社インターナショナル)

  • 2020/01/18
スーパーカブは、なぜ売れる / 中部 博
スーパーカブは、なぜ売れる
  • 著者:中部 博
  • 出版社:集英社インターナショナル
  • 装丁:単行本(256ページ)
  • 発売日:2018-12-14
  • ISBN-10:4797673672
  • ISBN-13:978-4797673678
内容紹介:
超ロングセラーモビリティの秘密を解き明かすビジネス・ノンフィクション!ホンダのスーパーカブが60周年を迎えた。1958年(昭和33年)に創業者・本田宗一郎が生み出したこの小型オートバイは… もっと読む
超ロングセラーモビリティの秘密を解き明かす
ビジネス・ノンフィクション!

ホンダのスーパーカブが60周年を迎えた。
1958年(昭和33年)に創業者・本田宗一郎が生み出したこの小型オートバイは、「乗って楽しく、燃費よく、壊れない」という、
今も変わらぬブランド価値とともに、日本はもちろん世界中で受け入れられ、その累計生産台数はついに1億の大台を突破した。
これは約2,100万台を生産したVW・ビートルや、約1,500万台を生産したT型フォードといった歴史的名車たちを凌駕する、おびただしい記録だ。

1億台達成の要因は、もちろん海外での普及が大きなファクターだ。取材を進めていくうちに、誕生以来、ホンダの海外進出を先導し続け、
世界中で庶民の暮らしに深く浸透してきたことだけでなく、その道のりが決して平坦なものではなかったことがわかってきた。
各国の地勢や文化、物価の違いはもちろん、戦争や経済不安、コピー商品の台頭…といった数々の困難が立ちはだかっていたのだ。
スーパーカブと世界のホンダマンたちは、これをいかにして乗り越えてきたのか?
本田宗一郎がスーパーカブに埋め込んだDNAとは?
そして2億台達成を目論むホンダが見据える次なるシナリオとは――?

二輪四輪ビジネスに精通し、本田宗一郎を徹底取材した経験をもつ著者が、日本はもちろん中国や東南アジア、南米の各国を精力的に取材。
この歴史的モビリティをめぐるビジネスの全貌を世界で初めて解き明かした。
ホンダファン、カブファンはもちろん、ビジネスパーソン必読のビジネス・ノンフィクション!

【目次】
序章 一億台突破
第一章 最初の一台
第二章 立体商標登録
第三章 日本からアメリカへ
第四章 ヨーロッパ、そしてアジアへ
第五章 ふたつのスーパーカブ・パラダイス
第六章 ふたつの最前線 南米と中国
第七章 ふたたび日本のスーパーカブ
あとがき

【著者プロフィール】
中部 博
1953年生まれ。週刊誌記者、テレビ司会者などジャーナリスト時代を経てノンフィクションの書き手となる。主な著書に『HONDA F1 1000馬力のエクスタシー』(集英社)、
『いのちの遺伝子・北海道大学遺伝子治療2000日』(集英社)、『ホンダ式』(東洋経済新報社)、『定本 本田宗一郎伝』(三樹書房)、
『炎上―1974年富士・史上最大のレース事故』(文藝春秋)などがある。日本映画大学「人間総合研究」非常勤講師。

ベスト&ロングセラー商品誕生の舞台裏を活写

知らない人も多いだろうが(僕も知らなかった)、ホンダのバイク「スーパーカブ」は累計で最も多く売れているモビリティー(移動性)の工業製品である。その数、1958年の発売以来、実に1億台以上。フォードの乗用車「モデルT」が19年間で1500万台、フォルクスワーゲンの「ビートル」が58年間で2150万台。いくら低価格のバイクとはいえ、1億台という数字のすごさがわかる。しかも現役モデル。日本発の最強商品といってよい。

スーパーカブには卓越した商品の特徴のすべてが詰まっている。ロングセラー。優れた基本性能。経済合理的で大衆向け。耐久性。快適性。楽しさ。シンプルで上品なデザイン。何よりも、骨太なコンセプトが商品の隅々まで浸透していること。

開発のプロセスをたどった前半にはとりわけしびれる。開発総責任者は本田宗一郎。商品企画は右腕の藤澤武夫。創業直後から「世界一でなければ日本一ではない」というナイスな檄(げき)を飛ばしていた宗一郎が、創業10年目にして社運をかけて勝負に出たのがスーパーカブだった。

宗一郎の開発コンセプトは「手の内に入るモノ」。藤澤の商品コンセプトは「女性が乗りたくなるオートバイ」。それだけだった。設計から機能、性能、仕様からビジネスモデルに至るまで、この普遍的な価値を凝縮した骨太のコンセプトが着実に具現化されていった。

当時の未舗装道路を走るには、スクーターと違って17インチの大型タイヤでなくてはならない。快適な走行のためには、小型50CCでありながらスクーターの2ストロークではなく4ストローク・エンジンでなければならない。乗る人が跨(また)ぎやすく乗り降りしやすいデザインで、片手が自由になるオートマチッククラッチ、服や靴が汚れないフルカバーのボディーで、耐久性だけでなく、修理も簡単で安全でなければならない。これら開発上の難題を一つひとつ克服することで、明快なコンセプトのもとに完全に統合された名車が生まれた。発売直後から日本で大ヒットし、ホンダの本格的海外展開の第一歩であるアメリカ市場を切り開いた先兵もスーパーカブだった。

スーパーカブは多くの国で日常の風景に完全に溶け込んだ「自然な存在」になった。驚くべきことに、現在日本で売られているスーパーカブは、コンセプトはもちろん、メカニズムもレイアウトもシルエットも発売当時から変わっていないという。

本書を読んで、久しぶりにバイクに乗りたくなった。
スーパーカブは、なぜ売れる / 中部 博
スーパーカブは、なぜ売れる
  • 著者:中部 博
  • 出版社:集英社インターナショナル
  • 装丁:単行本(256ページ)
  • 発売日:2018-12-14
  • ISBN-10:4797673672
  • ISBN-13:978-4797673678
内容紹介:
超ロングセラーモビリティの秘密を解き明かすビジネス・ノンフィクション!ホンダのスーパーカブが60周年を迎えた。1958年(昭和33年)に創業者・本田宗一郎が生み出したこの小型オートバイは… もっと読む
超ロングセラーモビリティの秘密を解き明かす
ビジネス・ノンフィクション!

ホンダのスーパーカブが60周年を迎えた。
1958年(昭和33年)に創業者・本田宗一郎が生み出したこの小型オートバイは、「乗って楽しく、燃費よく、壊れない」という、
今も変わらぬブランド価値とともに、日本はもちろん世界中で受け入れられ、その累計生産台数はついに1億の大台を突破した。
これは約2,100万台を生産したVW・ビートルや、約1,500万台を生産したT型フォードといった歴史的名車たちを凌駕する、おびただしい記録だ。

1億台達成の要因は、もちろん海外での普及が大きなファクターだ。取材を進めていくうちに、誕生以来、ホンダの海外進出を先導し続け、
世界中で庶民の暮らしに深く浸透してきたことだけでなく、その道のりが決して平坦なものではなかったことがわかってきた。
各国の地勢や文化、物価の違いはもちろん、戦争や経済不安、コピー商品の台頭…といった数々の困難が立ちはだかっていたのだ。
スーパーカブと世界のホンダマンたちは、これをいかにして乗り越えてきたのか?
本田宗一郎がスーパーカブに埋め込んだDNAとは?
そして2億台達成を目論むホンダが見据える次なるシナリオとは――?

二輪四輪ビジネスに精通し、本田宗一郎を徹底取材した経験をもつ著者が、日本はもちろん中国や東南アジア、南米の各国を精力的に取材。
この歴史的モビリティをめぐるビジネスの全貌を世界で初めて解き明かした。
ホンダファン、カブファンはもちろん、ビジネスパーソン必読のビジネス・ノンフィクション!

【目次】
序章 一億台突破
第一章 最初の一台
第二章 立体商標登録
第三章 日本からアメリカへ
第四章 ヨーロッパ、そしてアジアへ
第五章 ふたつのスーパーカブ・パラダイス
第六章 ふたつの最前線 南米と中国
第七章 ふたたび日本のスーパーカブ
あとがき

【著者プロフィール】
中部 博
1953年生まれ。週刊誌記者、テレビ司会者などジャーナリスト時代を経てノンフィクションの書き手となる。主な著書に『HONDA F1 1000馬力のエクスタシー』(集英社)、
『いのちの遺伝子・北海道大学遺伝子治療2000日』(集英社)、『ホンダ式』(東洋経済新報社)、『定本 本田宗一郎伝』(三樹書房)、
『炎上―1974年富士・史上最大のレース事故』(文藝春秋)などがある。日本映画大学「人間総合研究」非常勤講師。

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週刊エコノミスト

週刊エコノミスト 2019年5月7日

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