書評

『変貌する清盛―『平家物語』を書きかえる』(吉川弘文館)

  • 2020/01/24
変貌する清盛―『平家物語』を書きかえる / 樋口 大祐
変貌する清盛―『平家物語』を書きかえる
  • 著者:樋口 大祐
  • 出版社:吉川弘文館
  • 装丁:単行本(222ページ)
  • 発売日:2011-02-01
  • ISBN-10:4642057153
  • ISBN-13:978-4642057158
内容紹介:
おごる平家は久しからず-犯した悪行の因果で滅んだとされる平清盛。悪人としてのイメージはどのように創られてきたのか。『平家物語』や同時代の物語・日記から国定教科書、現代小説まで、変貌する清盛像を読み解く。

“おごる平家”を検証する

「平家物語」は、日本の物語文学史上、最高傑作の一つといわれる。そこから派生した文学、芸能作品は、中世以降、現代に至るまで膨大な数に上る。古代王朝政治が滅び、源平合戦の争乱期を経て中世の幕が開くまでの、この壮大な歴史ドラマを知らない人は、まずいない。

そこに描かれた平清盛のイメージも、多くの人が共有してきた。主人公の清盛は、成り上がった末の「おごれる人」であり、権力をほしいままにして、王法をないがしろにしたり、南都(奈良)を焼き打ちにするなどの「悪行」を重ね、天罰とも思える熱病にかかって死んだ、というものだ。やがて、あれほどの栄華を誇った平家も、源氏に滅ぼされる。

そうした「おごる平家」を象徴する「悪いやつ」としての清盛像は、どのようにして創られたのか。

著者は、平家物語を軸に、清盛と同時代の日記や文学に記された清盛を探り、もう一つの清盛像を浮かび上がらせる。

例えば、「十訓抄(じっきんしょう)」には、部下に対して思いやりと気配りを見せる清盛が記され、「愚管抄(ぐかんしょう)」には、寛大で包容力があり、双方の調和を取る清盛が描かれる。

また九条兼実の日記である「玉葉(ぎょくよう)」は、平治の乱(1159年)以後の清盛を好意的に描く。しかし、清盛が79年にクーデターを成功させて権力を掌握した後、兼実の筆は、清盛に対して嫌悪に満ちたものになっていくという。

ついで著者は、「平家物語」の中の清盛を詳しく分析。さらに、中世後期の謡曲や幸若舞曲で平家物語が大衆化していき、清盛の「悪行」も変貌していくことを記す。また近世演劇(浄瑠璃・歌舞伎)で、清盛の人間的悪行ぶりが誇張されていったことを論証する。

それだけではない。近代以降、国定教科書や研究書、また吉川英治の「新平家物語」ほか小説の中で、清盛像がどう変貌してきたかを述べる。研究書ではあるが、読み物のごとく面白い。


[書き手]高橋 千劔破(たかはし ちはや・文芸評論家)
変貌する清盛―『平家物語』を書きかえる / 樋口 大祐
変貌する清盛―『平家物語』を書きかえる
  • 著者:樋口 大祐
  • 出版社:吉川弘文館
  • 装丁:単行本(222ページ)
  • 発売日:2011-02-01
  • ISBN-10:4642057153
  • ISBN-13:978-4642057158
内容紹介:
おごる平家は久しからず-犯した悪行の因果で滅んだとされる平清盛。悪人としてのイメージはどのように創られてきたのか。『平家物語』や同時代の物語・日記から国定教科書、現代小説まで、変貌する清盛像を読み解く。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ

初出メディア

共同通信社

共同通信社 2011年4月

関連記事
吉川弘文館の書評/解説/選評
ページトップへ