卑小な村社会、これが日本
青森県の小さな村で村議をしている「おれ」が主人公。人妻との不倫の証拠を摑(つか)まれた主人公はそれをネタにゆすられる。立候補した友だちの選挙を妨害するよう強要される。そして――。話は小さく、卑小だ。中年にさしかかろうとする主人公の情けなさ、臆病さに胸が苦しくなる。だが村の選挙戦の愚かさは、はたして彼らだけのものなのか? むろんそうではない、と木村は考えているし、読者にも共有されるはず。いまの日本をぎゅっと圧縮してみせる。第162回芥川賞候補作。
併録の「天空の絵描きたち」は、ビルの窓拭きを描いて話題になった。ストレートで伸びやかな小説だ。あらためて木村の小説が好きになる。