書評

『京大吉田寮』(草思社)

  • 2020/02/17
京大吉田寮 / 平林 克己,宮西 建礼,岡田 裕子
京大吉田寮
  • 著者:平林 克己,宮西 建礼,岡田 裕子
  • 出版社:草思社
  • 装丁:単行本(80ページ)
  • 発売日:2019-12-04
  • ISBN-10:4794224257
  • ISBN-13:978-4794224255
内容紹介:
100年後もここに集う。
吉田寮の”今”を伝える、写真によるドキュメント。

1913年竣工、現存する日本最古の学生寮、京都大学吉田寮寄宿舎。
学生自治寮として長い歴史をもち、また建築物としても価値をもつ吉田寮と、
そこに生きる寮生たちの”今”、この時をとらえ、伝え記録する。

「吉田寮の魅力について寮生に尋ねると、てんでばらばらな答えが返ってくる。
家賃が安い こと、友達ができること、規則が緩いこと、上下関係がないこと、
猫がいること、貴重な 建築であること、歴史があること、趣味に没頭できること。
きっと人の数だけ住む理由が あるのだろう」  本文より

ひたすら思索を積み重ね、言葉を紡いだ生活の証し

1913年に建設された、現存する学生寮の中で最古の木造建築となる京都大学の吉田寮。耐震に不安があることなどを理由に大学側から明け渡しを求められているが、この寮が築き上げてきた「自分たちに関することは自分たちで決める」=「自治」の精神で、学生たちが守り抜いている。性別や国籍や年齢で区分けすることはしないので、吉田寮には「上回生には敬語を使わなくても構わない」という文化が根付いているという。

それぞれの暮らしが切り取られた写真集。その写真から、建物が軋(きし)む音や、遠くの部屋ではしゃぐ声が聞こえてくるかのよう。熱がこもる夏や、すきま風にやられる冬も想像できる。学生たちの生き生きとした表情が何よりいい。染み込んだ雑念や邪念を背負いこむように、古びた寮に居座っている。

1925年、マルクス主義の研究サークルに所属していた吉田寮生が特高警察に検束された「京都学連事件」では、出所後に学生が自殺してしまう。この事件は日本内地で治安維持法が適用された最初の事例になった。中庭にはかつて、防空壕があり、空襲に備えていた。一人また一人と徴兵され、戻ってくることはなかったという。そんな中庭には今、にわとりやあひるがのんびりと歩いている。

「対話も自由もなければそれは京大ではない」「仮装決起」「ゼルダ紛失のイキ」(サツ、と続くのだと思うが写真が切れて見えない)などなど、写真をめくると、ありとあらゆるところにさまざまな貼り紙がなされている。いちいちメッセージにして、それぞれで受け止める。

器用か不器用かといえば、不器用な人たち、という感じが漂ってくるのだが、別に器用である必要なんてない。ひたすら思索し続けてきた痕跡が熱い。
京大吉田寮 / 平林 克己,宮西 建礼,岡田 裕子
京大吉田寮
  • 著者:平林 克己,宮西 建礼,岡田 裕子
  • 出版社:草思社
  • 装丁:単行本(80ページ)
  • 発売日:2019-12-04
  • ISBN-10:4794224257
  • ISBN-13:978-4794224255
内容紹介:
100年後もここに集う。
吉田寮の”今”を伝える、写真によるドキュメント。

1913年竣工、現存する日本最古の学生寮、京都大学吉田寮寄宿舎。
学生自治寮として長い歴史をもち、また建築物としても価値をもつ吉田寮と、
そこに生きる寮生たちの”今”、この時をとらえ、伝え記録する。

「吉田寮の魅力について寮生に尋ねると、てんでばらばらな答えが返ってくる。
家賃が安い こと、友達ができること、規則が緩いこと、上下関係がないこと、
猫がいること、貴重な 建築であること、歴史があること、趣味に没頭できること。
きっと人の数だけ住む理由が あるのだろう」  本文より

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初出メディア

サンデー毎日

サンデー毎日 2020年1月26日号

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