書評

『秘密諜報員ベートーヴェン』(新潮社)

  • 2017/09/19
秘密諜報員ベートーヴェン  / 古山 和男
秘密諜報員ベートーヴェン
  • 著者:古山 和男
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:新書(232ページ)
  • 発売日:2010-05-00
  • ISBN:4106103664
内容紹介:
ベートーヴェンが「不滅の恋人よ」と呼びかける三通の「ラヴレター」は、いまだに、誰に宛てて書かれたのか、決定的な証拠はない。この音楽史最大のミステリーに、新説が登場!実はこの手紙は、1812年の夏、全ヨーロッパを巻き込んだ大事件の中で、楽聖が「政治的危機」を友人に伝える「暗号」だったというのだ。果たして真説か。3通の手紙から壮大なスケールに広がる歴史絵巻、ここに開幕。

恋文を装った政敵情報の通信文

音楽史上、もっとも論争のにぎやかな事件の一つに、ベートーヴェンの〈不滅の恋人〉問題がある。死後、ベートーヴェンの遺品の中から、三通の自筆書簡が出てきた。相手を〈不滅の恋人〉と呼びながら、具体的な名前を書き記していない、やっかいな恋文である。

従来、音楽史家はさまざまな状況証拠から、この秘密の恋人を特定しようと、論陣を張り合った。いわく、ピアノの弟子のジュリエッタ・グイッチャルディ。やはり弟子のテレーゼ・フォン・ブルンスヴィク。名指しされただけで五人もの女性が俎上(そじょう)に載せられた。しかしどれも決め手に欠け、いまだに結論が出ていない。

しかるに本書の著者は、あっと驚く仮説を提示する。〈不滅の恋人〉なる女性など、はなから存在しない。手紙そのものが恋文を装った秘密の通信文で、ベートーヴェンは親しいパトロンにあてて、政敵の情報を伝えたのだ、という。傍証として、著者は当時の欧州の政治経済情勢を、克明に再現する。いささか、牽強付会(けんきょうふかい)と思われる考察もあるが、常識を打ち破る大胆な仮説には、それなりに説得力がある。
秘密諜報員ベートーヴェン  / 古山 和男
秘密諜報員ベートーヴェン
  • 著者:古山 和男
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:新書(232ページ)
  • 発売日:2010-05-00
  • ISBN:4106103664
内容紹介:
ベートーヴェンが「不滅の恋人よ」と呼びかける三通の「ラヴレター」は、いまだに、誰に宛てて書かれたのか、決定的な証拠はない。この音楽史最大のミステリーに、新説が登場!実はこの手紙は、1812年の夏、全ヨーロッパを巻き込んだ大事件の中で、楽聖が「政治的危機」を友人に伝える「暗号」だったというのだ。果たして真説か。3通の手紙から壮大なスケールに広がる歴史絵巻、ここに開幕。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2010年7月18日

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