書評

『恋するオペラ 集英社新書』(集英社)

  • 2020/04/23
恋するオペラ / 金窪 周作
恋するオペラ
  • 著者:金窪 周作
  • 出版社:集英社
  • 装丁:新書(200ページ)
  • 発売日:2002-03-15
  • ISBN-10:4087201333
  • ISBN-13:978-4087201338
内容紹介:
オペラは究極の総合芸術。しかし、見方を変えれば、ストーリーは単純明快、役どころも決まっているので、言葉が分からなくても、ほんの少し内容について知っているだけで、楽しみの幅がぐんと… もっと読む
オペラは究極の総合芸術。しかし、見方を変えれば、ストーリーは単純明快、役どころも決まっているので、言葉が分からなくても、ほんの少し内容について知っているだけで、楽しみの幅がぐんと広がる。「クラシック音楽は苦手」あるいは「オペラはちょっと敷居が高くて」という人におすすめの、普段着のオペラ入門書。舞台裏のおもしろいエピソードを披露しながら、オペラのストーリー、見どころ・聴きどころを簡潔に紹介する。『セビリアの理髪師』『カルメン』『椿姫』『ボエーム』『メリー・ウィドウ』『ばらの騎士』など、若い娘から年上の女までのヒロインたちに学ぶ、古今東西変わらない恋愛のマニュアルも満載。

オペラの基本は「恋愛」

私にとって今年はモーツアルト強化年間である(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2002年)。正月から毎日モーツアルトばかり聴いている。ピアノ曲や弦楽四重奏、交響曲と聴いてきて、困ったのがオペラだ。昔からオペラとミュージカルは苦手だった。ところが、「ドン・ジョバンニ」と「フィガロの結婚」を聴き始めたら……いいではないか。日々のモーツアルト漬けの成果か、とても心地よい。これを機会に、いっちょオペラに目覚めてみるか。

というわけで金窪周作の『恋するオペラ』を読んでみた。この本、オペラを知らなくても面白い。「オペラには私たちの日常にはないすべてがあります」「オペラが面白いのはメロドラマであるからです」という著者によると、オペラの基本は恋愛ドラマ。さまざまな恋愛のかたちをオペラで辿りながら、女の一生を描いてしまおうという本である。モーツアルトの「コシ・ファン・トゥッテ」やロッシーニの「セビリアの理髪師」で若い娘の恋心を語り、ヴェルディの「椿姫」で大人の恋を、シュトラウスの「ばらの騎士」で青年と熟女の恋を語る。章とびらには池田理代子によるイラストを飾るこりようである。

作品の内容だけでなく、成立背景や時代的位置づけもさらりと語ったうえで、著者自身による歌詞の意訳を載せるなど、構成もじつにうまい。私のように昨日までオペラが苦手だった者にもよく伝わる。「フィガロの結婚」がきわめて政治的な作品であることなどを読むと、フィッシャー=ディスカウの歌も違って聞こえてくる。

同じくオペラを解説した新書でも、砂川稔監修の『オペラの魔力』(青春出版社プレイブックス)はまったく性格が違う本だ。名作ガイドや人気歌手のガイドにページを割いている。読む楽しみでは『恋するオペラ』のほうが勝っているが、CDを買ったり舞台を見に行こうというにはこちらが役に立つ。というわけで、今回の文章、BGMはカール・ベーム指揮「フィガロの結婚」でした。

恋するオペラ / 金窪 周作
恋するオペラ
  • 著者:金窪 周作
  • 出版社:集英社
  • 装丁:新書(200ページ)
  • 発売日:2002-03-15
  • ISBN-10:4087201333
  • ISBN-13:978-4087201338
内容紹介:
オペラは究極の総合芸術。しかし、見方を変えれば、ストーリーは単純明快、役どころも決まっているので、言葉が分からなくても、ほんの少し内容について知っているだけで、楽しみの幅がぐんと… もっと読む
オペラは究極の総合芸術。しかし、見方を変えれば、ストーリーは単純明快、役どころも決まっているので、言葉が分からなくても、ほんの少し内容について知っているだけで、楽しみの幅がぐんと広がる。「クラシック音楽は苦手」あるいは「オペラはちょっと敷居が高くて」という人におすすめの、普段着のオペラ入門書。舞台裏のおもしろいエピソードを披露しながら、オペラのストーリー、見どころ・聴きどころを簡潔に紹介する。『セビリアの理髪師』『カルメン』『椿姫』『ボエーム』『メリー・ウィドウ』『ばらの騎士』など、若い娘から年上の女までのヒロインたちに学ぶ、古今東西変わらない恋愛のマニュアルも満載。

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初出メディア

週刊朝日

週刊朝日 2002年5月3日-10日

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