書評

『井上靖 未発表初期短篇集』(七月社)

  • 2020/07/30
井上靖 未発表初期短篇集 / 井上靖
井上靖 未発表初期短篇集
  • 著者:井上靖
  • 出版社:七月社
  • 装丁:単行本(280ページ)
  • 発売日:2019-04-11
  • ISBN-10:4909544046
  • ISBN-13:978-4909544049
内容紹介:
ユーモア・ミステリ・時代物と、多彩なジャンルで自らの可能性を試していた、知られざる20代の軌跡。戦後の未発表戯曲も収録。

デビュー前もさすがの筆力

井上靖は、『敦煌』『天平の甍(いらか)』といった歴史的傑作でいまも読まれている作家だろう。しかしその彼が、20代のころ、つまり作家デビューする前に、様々な媒体の懸賞小説に応募していたことは、あまり知られていないかもしれない。

7作を収めた本書は、最初期の井上の作風を楽しめる。ユーモア小説あり、探偵小説あり、時代小説もある。巻末には戯曲まで入っている。

文豪と呼ばれる存在になる前の文章だから、稚拙なのかも、と先入観を持ちながら読んだら、さすがの筆力。素人とはとても思えない。とりわけ探偵小説がいい。ハードボイルド風味もあり、すいすいと読めた。作家の懐の深さをあらためて思う。
井上靖 未発表初期短篇集 / 井上靖
井上靖 未発表初期短篇集
  • 著者:井上靖
  • 出版社:七月社
  • 装丁:単行本(280ページ)
  • 発売日:2019-04-11
  • ISBN-10:4909544046
  • ISBN-13:978-4909544049
内容紹介:
ユーモア・ミステリ・時代物と、多彩なジャンルで自らの可能性を試していた、知られざる20代の軌跡。戦後の未発表戯曲も収録。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2019年5月9日

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