くそ笑える未来だって見えないわけじゃない
世の中には、金の話ばっかりしている人がいて、そういう人はもれなく話がつまらないのだが、あっちはあっちで、金の話をしたがらないこっちを、つまらなさそうに見てくる。こっちだって、金を稼いで、それで暮らしている。なんで、オマエと話さなきゃいけないのか。パンクロッカーにして投資家によるこの本は、金の話ばっかりしてくるのに、とても話がおもしろい。「俺はやっぱりパンクが好きで、死ぬまで主体的に生きていきたい」と、人生を楽しむために投資に勤しむ。投資って、「うさんくさい青スーツでキモいクラッチバッグを小脇に抱えたFXなんとか投資家やブロガーみたいな人」のイメージがあるが、そうじゃない。愉快に生きるために投資するのだ。
社内の障がい者雇用率の高い会社に投資をする。「いつも『国がちゃんとしろ!』って思ってしまうような問題も、俺たちの仕事や活動を通して一個ずつひっくり返していけるのかもしれない」。Do it yourself=パンクの精神で投資先を選ぶ。
今、どこもかしこも同じような街作りになり、そこで同じような人が暮らす。そんな光景を作ったのは自分たちだ。「今俺たちの目の前にはうっすらとくそつまらない未来が浮かんで見えるけど、くそ笑える未来も全く見えないわけじゃない」。金は金だけでは語れないのに、金の話をする人はずっと金の話をしている。矢沢永吉のタオルは5000円くらいするのに、どうして次もまたそれを買うのか。こっちを考えたほうがいい。
株価をチェックしながら寿司屋で穴子を食べるスーツ姿の人がいた。この穴子を味わえないようじゃとても成功だと思えない、と言いそうになる。ド直球のツッコミと、意思のある投資。暮らしにパンクが染みている。