書評

『三つの教会と三人のプリミティフ派画家』(国書刊行会)

  • 2023/02/05
三つの教会と三人のプリミティフ派画家 / J.K.ユイスマンス
三つの教会と三人のプリミティフ派画家
  • 著者:J.K.ユイスマンス
  • 翻訳:田辺 保
  • 出版社:国書刊行会
  • 装丁:単行本(220ページ)
  • 発売日:2005-09-01
  • ISBN-10:4336047227
  • ISBN-13:978-4336047229
内容紹介:
ユイスマンスの傑作評論集。グリューネヴァルトの十字架刑図やフレマールの画家の聖母像の謎と神秘に迫り、ノートルダム大聖堂をはじめとした教会堂の魂のあらわれを余すところなく描く、比類なき美術批評。本邦初訳。
『さかしま』で著名なユイスマンスの遺作となった美術論集。ノートル=ダムほか二つの教会と、グリューネヴァルトほかフランクフルトの謎の画家二人を論じている。原著からほぼ百年後の初訳だが、表層を凝視し、その奥から信仰と人間の格闘のドラマをえぐりだすまなざしの強さは、現在でも感嘆を呼びさます。

題材は多様だが、論者の嗜好(しこう)は明白である。ノートル=ダム寺院の象徴表現に錬金術師の暗い欲望を検証し、フランクフルトの典雅な女性像に悪魔の誘惑の最も淫猥(いんわい)な表現を見てとるのだ。この作家は、天国よりも地獄を見たがる精神の持ち主だった。それだけに、至純の天国への憧(あこが)れもいっそう激烈だった。

圧巻は、コルマールの美術館のグリューネヴァルトを論じた文章である。壊疽(えそ)に侵された死体のようなキリストと輝かしく復活するキリストを同時に描いたこの画家は、ユイスマンスの極端から極端へと走る二面性をよく体現していた。
三つの教会と三人のプリミティフ派画家 / J.K.ユイスマンス
三つの教会と三人のプリミティフ派画家
  • 著者:J.K.ユイスマンス
  • 翻訳:田辺 保
  • 出版社:国書刊行会
  • 装丁:単行本(220ページ)
  • 発売日:2005-09-01
  • ISBN-10:4336047227
  • ISBN-13:978-4336047229
内容紹介:
ユイスマンスの傑作評論集。グリューネヴァルトの十字架刑図やフレマールの画家の聖母像の謎と神秘に迫り、ノートルダム大聖堂をはじめとした教会堂の魂のあらわれを余すところなく描く、比類なき美術批評。本邦初訳。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2005年10月16日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
中条 省平の書評/解説/選評
ページトップへ