「どんな風に働くのかな…」「うまくやれるかな…」
右も左も分からない社会人1年生の彼らの心は、期待よりも不安でいっぱいのはずです。
そんな彼らを導くのは、職場の上司、先輩、人事担当のはずですが、その中には“悪知恵”を駆使して、彼らを陥れよう、搾取しようとする人々がいます。世間ではこのような組織のことを「ブラック企業」と呼んでいます。
もし、自分の勤め先がブラック企業だったら…?
わが子や、かわいい孫の職場が、とんでもない悪知恵が蔓延る会社だったら…?
若者たちの「知らない」につけ込んで、あの手この手で搾取しようとする悪知恵から、どのように身を守れるのでしょうか。
「ブラック企業 対策」でネット検索? きっと、膨大な情報量と正誤があいまいな口コミやウワサに戸惑い、余計に混乱してしまうでしょう。
身近な誰かに相談? もしかすると、立派に社会で活躍している社会人の先輩たちほど、よく分かっていないかもしれません。
『搾取されない! だまされない! 損をしない! 20代からの働き方とお金のこと』では、労働とお金のプロから、ブラック企業から身を守る「これだけは知っておきたい」情報だけを教えてもらい、ぎゅぎゅっと1冊に凝縮しました。今回は本書から一部を抜粋し、ご紹介します。
「社員同士での飲み会を開いてはいけない」!? 謎の会社ルール
学校に「校則」という名の独自ルールがあるように、会社にも「就業規則」という名の独自ルールが設けられている。労働基準法でも、従業員が常時10人以上いる会社に対して、就業規則を作成し労働基準監督署に届けることを義務付けている。ほぼ他社のコピペで作っているところもあれば、変な規則を山盛りにしているところもある。基本は労働条件だったり、服務心得といったものが書かれている。しかし、その中には、完全会社都合な規則を設けているところも少なくない。とある会社の、退職届に関する就業規則。「退職届を提出する際は30日前までに支部長に相談し、許可が出れば書面にて提出。支部長とともに課長へ提出し、施設長へ……」。以下略とするが、とにかく退職届が会社に受理されるまでの道のりが長い。労働力を確保するため、いかにして辞めさせないようにするかと考えた末に作られた“悪知恵”就業規則だ。
退職届は直属の上司に渡すのが一般的だが、社長宛の内容なので社長に渡してもいい。会社へ直接出向けない理由があれば、郵送でも問題ない。まわりくどい手続きに正当な根拠が見当たらなければ、このような就業規則は無視していい。
また、ある会社では「社内の人間同士で飲み会を開いてはいけない」という謎の就業規則を設けていた。どうやら会社の愚痴を言い合ったり、団結して会社に歯向かわれることを恐れたためのものらしい。飲み会はプライベートの領域であり、労働時間外だ。就業規則を設ける正当性がない。このような規則は無効と見ていいだろう。悪知恵の働く会社は、このような悪意や後ろめたさのある就業規則をいくつも設定している。
また別の会社に実在した就業規則が、「社内の人間に雇用契約を漏らしてはいけない」。給料などの労働条件を同僚に教えてはいけないというのだ。これは待遇の差から不満を持つ社員を生み出さないための、口封じ策であると思われる。しかし、給料を教え合うのは社員それぞれの勝手。これも就業規則で制限するようなものではない。
優先順位は、就業規則<法令
いずれにしろ、労働基準法や労働契約法、民法や憲法など、法令の内容を侵すような就業規則は無効とされる。社長の悪知恵によって生み出された就業規則は、大概が法令に違反していると思って差し支えない。たとえ「就業規則に書いてあるだろ!」と言われても、会社都合の理不尽な内容であれば、従わずに抗う姿勢を貫くべきだ。社長としては法の抜け穴をついたつもりかもしれないが、「法令のほうが優先されますから!」と反撃に出るのが賢明だ。
【書き手】みんなの働き方改革研究会
本稿は『搾取されない! だまされない! 損をしない! 20代からの働き方とお金のこと』(祥伝社)より抜粋のうえ作成