書評
『情報の呼吸法』(朝日出版社)
ソーシャルメディアは一期一会
大学の授業で学生たちに、金正日死去のニュースを何で知ったかを聞いた(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2012年)。いちばん多かったのはツイッターだった。ツイッターは彼らの日常にとけこんでいる。電車を待つ間などわずかな時間にスマートフォンでチェック。気になるニュースがあれば新聞社のサイトなどにも飛んでいる。津田大介『情報の呼吸法』は、「ツイッターの伝道師」の異名もとる著者の自伝的評論である。
自伝的というのは、津田がこれまでどのように情報とつきあってきたか、現在はどのようにしているのかが、かなり具体的に書かれているからだ。本書は「津田大介のつくりかた」でもある。
ツイッターなどソーシャルメディアが情報の流れを変えた、と津田はいう。チュニジアのジャスミン革命がそれを象徴するできごとであり、日本では東日本大震災にもあらわれた。
津田はマスメディアの存在意義を否定しない。しかし、マスメディアが客観的事実の報道なら、ソーシャルメディアでは専門家の情報を多角的に入手できる。大災害時などでは、情報の差が生死をわけることもある。
おもしろいのは、ソーシャルメディアは一期一会だと述べていること。情報量があまりにも多くなると、すべてをチェックすることはできない(津田のフォロー数は一万人超)。見たときたまたまあった情報に遭遇する。デジタルメディアの特性と一見矛盾するようだが、この偶然性がソーシャルメディアをいきいきとしたものにしているのかもしれない。
いま津田が考えているのは、新しい政治メディアをつくることだ。新聞など既存メディアは政局報道ばかりで政策はあまり語られない。民主党内で小沢派がどうしたこうしたなんてどうでもいい。それより政策を伝え、政治をめぐる情報の血流をよくしようと津田は述べる。大いに期待したい。
さて私は、短期間で挫折したツイッターを再開すべきかどうか。いま真剣に悩んでいる。
ALL REVIEWSをフォローする




































