競馬ファンの間で「旅打ち」とよばれる競馬場放浪の旅も、海外競馬となると、奇想天外なことに出会う。
アジア、オセアニア、中東、ヨーロッパ、アメリカに散らばる一五〇ほどの競馬場を訪れた著者は、記憶に残る六三場の思い出を語る。エリート会社員を脱落(?)してフリーの執筆活動をしているせいか、語り口はいたってなめらか。
馬だけではなくカジノも闘鶏もあるサンラザロ競馬場(フィリピン)、一生に一度は行ったほうがいい雪と氷上を走るサンモリッツ競馬場(スイス)、屋台が並んで世界一メシの充実したコラート競馬場(タイ)、文句なしの味だったのに人生最大の食あたりにあったイポー競馬場(マレーシア)、酒場のある船で往復できるロイヤル・ウィンザー競馬場(イギリス)、高額馬券の払い戻しで大騒ぎになるロンシャン競馬場(フランス)、最低限の競馬でいいという全レース2頭立てのハイアリア競馬場(アメリカ)、調教見学朝食会もある高級避暑地のサラトガ競馬場(アメリカ)、還暦女性騎手も活躍するウーラマイ競馬場(オーストラリア)等々。
大レースよりもひなびた田舎の競馬がお好みの著者は心底競馬を楽しめるのだ。