書評

『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』(晶文社)

  • 2024/05/13
撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて / 内田樹 編
撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて
  • 著者:内田樹 編
  • 出版社:晶文社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(272ページ)
  • 発売日:2022-04-27
  • ISBN-10:4794973071
  • ISBN-13:978-4794973078
内容紹介:
持続可能な未来のために、市場原理から、地球環境破壊から、都市一極集中から撤退する時が来た!日本のこれからを考えるアンソロジー少子化・人口減、気候変動、パンデミック……。国力が衰微… もっと読む
持続可能な未来のために、市場原理から、地球環境破壊から、都市一極集中から撤退する時が来た!日本のこれからを考えるアンソロジー

少子化・人口減、気候変動、パンデミック……。国力が衰微し、手持ちの国民資源が目減りしてきている現在において「撤退」は喫緊の論件。にもかかわらず、多くの人々はこれを論じることを忌避している。
名著『失敗の本質』で言われた、適切に撤退することができずに被害を拡大させた旧・日本陸軍と同じ轍をまた踏むことになるのか?
「子どもが生まれず、老人ばかりの国」において、人々がそれなりに豊かで幸福に暮らせるためにどういう制度を設計すべきか、「撤退する日本はどうあるべきか」について衆知を集めて論じるアンソロジー。

目次

まえがき 内田樹

■1 歴史の分岐点で
撤退は知性の証である──撤退学の試み 堀田新五郎
撤退のための二つのシナリオ 内田樹
撤退戦としてのコミュニズム 斎藤幸平
民主主義からの撤退が不可能だとするならば 白井聡
撤退戦と敗戦処理 中田考

■2 撤退の諸相
撤退という考え方──ある感染症屋のノート 岩田健太郎
下野の倫理とエンパワメント 青木真兵
音楽の新しさはドレミの外側にだって広がっている 後藤正文
文明の時間から撤退し、自然の時間を生きる 想田和弘
撤退のマーチ 渡邉格
撤退女子奮闘記 渡邉麻里子

■3 パラダイム転換へ
『桜の園』の国から 平田オリザ
ある理系研究者の経験的撤退論 仲野徹
Withdrawalについて──最も根っこのところからの撤退 三砂ちづる
個人の選択肢を増やす「プランB」とは何か 兪炳匡
極私的撤退論 平川克美
『撤退論』に寄稿しませんか。内田樹氏のひと声に15名の論客が馳せ参じた。さながらミニ梁山泊(りょうざんぱく)だ。

撤退とは≪国力衰微の現実に適切に対応する≫こと(まえがき)。現実を見つめ生き方を切り換えよう。当たり前だが、これができない。

撤退は英語でリトリート。教会メンバーが静かに内面をふり返る合宿だ。信仰の原点に戻ろう。この精神で見直せば、右肩下がりの衰退も豊かに生き直すチャンスとわかる。

論客らの声を聞こう。斎藤幸平氏は≪下からのコモン(公共財)の再生≫を説く。白井聡氏は、民主主義再生には≪他者の耐え難さを耐え≫よと説く。岩田健太郎氏は感染症研究を踏まえ≪理性的な悲観論者≫たれと説く。渡邉格・麻里子氏は田舎に撤退、野生の菌でタルマーリーというパン屋を営む。平川克美氏は起業した会社を畳み「隣町珈琲」を開いた。後退と見えていたのが実は前進。それに気づくのが撤退だ。

『撤退論』は読者に呼びかける。日本人は八○年近く夢を見てきた。夢はいま悪夢だ。生活習慣病のように、慣性の力学から逃れられない。逃れるには現状を語る言葉をもつこと。その第一歩が本書だよ、と。
撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて / 内田樹 編
撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて
  • 著者:内田樹 編
  • 出版社:晶文社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(272ページ)
  • 発売日:2022-04-27
  • ISBN-10:4794973071
  • ISBN-13:978-4794973078
内容紹介:
持続可能な未来のために、市場原理から、地球環境破壊から、都市一極集中から撤退する時が来た!日本のこれからを考えるアンソロジー少子化・人口減、気候変動、パンデミック……。国力が衰微… もっと読む
持続可能な未来のために、市場原理から、地球環境破壊から、都市一極集中から撤退する時が来た!日本のこれからを考えるアンソロジー

少子化・人口減、気候変動、パンデミック……。国力が衰微し、手持ちの国民資源が目減りしてきている現在において「撤退」は喫緊の論件。にもかかわらず、多くの人々はこれを論じることを忌避している。
名著『失敗の本質』で言われた、適切に撤退することができずに被害を拡大させた旧・日本陸軍と同じ轍をまた踏むことになるのか?
「子どもが生まれず、老人ばかりの国」において、人々がそれなりに豊かで幸福に暮らせるためにどういう制度を設計すべきか、「撤退する日本はどうあるべきか」について衆知を集めて論じるアンソロジー。

目次

まえがき 内田樹

■1 歴史の分岐点で
撤退は知性の証である──撤退学の試み 堀田新五郎
撤退のための二つのシナリオ 内田樹
撤退戦としてのコミュニズム 斎藤幸平
民主主義からの撤退が不可能だとするならば 白井聡
撤退戦と敗戦処理 中田考

■2 撤退の諸相
撤退という考え方──ある感染症屋のノート 岩田健太郎
下野の倫理とエンパワメント 青木真兵
音楽の新しさはドレミの外側にだって広がっている 後藤正文
文明の時間から撤退し、自然の時間を生きる 想田和弘
撤退のマーチ 渡邉格
撤退女子奮闘記 渡邉麻里子

■3 パラダイム転換へ
『桜の園』の国から 平田オリザ
ある理系研究者の経験的撤退論 仲野徹
Withdrawalについて──最も根っこのところからの撤退 三砂ちづる
個人の選択肢を増やす「プランB」とは何か 兪炳匡
極私的撤退論 平川克美

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2022年6月25日

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