統一教会の危険を三○年前に警告した必読書の改訂新版。新しく書き下ろした序章はいう。海外(特に北朝鮮)への資金の流れに捜査が及ぼうとするのを「政治の力」がストップ。アメリカで服役した文鮮明を金丸信が無理やり入国させた。こうして野放しになった三○年が、今回の安倍晋三元首相の銃撃事件の背景だ。
第Ⅰ章は、国際合同結婚式の集金の仕組みや舞台裏。第Ⅱ章は、秘書団を送り込むなど自民党との癒着ぶり。第Ⅲ章はニセ募金集めや霊感商法に駆り出された信者らの手記。こんな反社会的カルトが存在していいのかと、改めて目を開かれる。
統一教会は正式には「世界基督教統一神霊協会」。追及の手がゆるんだあとも悪質な集金を続けた。名称を「世界平和統一家庭連合」に変更して統一教会と無関係を装おう。こんな変更を認めてはだめだった。
著者の有田芳生氏は統一教会やオウム真理教を精力的に取材したジャーナリスト。参議院議員も二期つとめた。統一教会とズブズブの関係を続けていた自民党には、煙たい存在だったろう。本書は、忘れやすい世論に事件の原点を思い出させてくれる。いま読むべき自戒の一冊だ。