自分の調子を点検するのって難しい。最近いい感じ、と思っていたとしても、「いい感じだと思い込もうとしているだけでは?」なんて疑問を発生させた途端、あちこちのひび割れが気になってくる。
『元気じゃないけど、悪くない』(青山ゆみこ著・ミシマ社・2090円)は、タイトル通り、すっかり元気満々に戻ったわけではないけれど、「元気じゃない」状態をゆっくり見つめられるようにはなりました、と伝える言葉が丁寧に綴られていく。
「年を重ねれば、『人生』もそれなりにうまくやれるのだろう」と思っていたが、「心と身体のどちらも『ぽきん』と折れた」……50歳を迎えようとするタイミングで、長年連れ添った愛猫と別れ、新型コロナウイルスの感染拡大によって人と会えない生活が続いた。それでも日々は続く。続けなければいけない。歩みを止めようと考えた日もあったが、なんとか乗り越えていく。
ある時、「頭のあたりを覆っていたモヤのようなものが突然霧散」して、くっきりと見えるようになった。その結果、解決に向かうと思いきや、むしろ、「わかろうとすることを手放せなくなってしまった」のだ。頭の中で、問いがぐるぐる回り出す。新たな問いが同じところを回る。混乱し、プツリと切れてしまう。
一体、自分はどうしてしまったのだろうか。様々な角度で、そして明度で、自分を見つめようとする。人に会って話をする。自分だけの場所を作ろうとする。何が耐えられないのか、何が自分を回復させてくれるのか。なかなかわからない。
「『自分でわからない』ことは、『自分だけ』では言葉にできないことなのかもしれない」との一文が頭に残る。自分のことは自分がよく知っていると、よく言われる。自分もそう思ってきた。でも、本当にそうなのか。自分を確かめるためにも、自分以外の人に今の自分を差し出してみる。
もがきながら小さな歩みを重ねていく時、他者に委ねるという選択肢がある。自分の声を聞き取りつつ、その都度、読者に問いかけてくる。