人にものを教えられるのが大嫌い。旅先で道を尋ねるのもいや、家電量販店でパソコンの使い方を訊(き)くのもいや。教えを請うのは何かに負けたような気がする。
だから書店の平台にどーんと積まれた『独学大全』(読書猿著・ダイヤモンド社・3080円)に遭遇したときは、「いいもん見つけた!」と飛びついた。厚いぞ、なにしろ788ページ。レンガみたい。
独学に関するあらゆるノウハウが詰まった本である。資料の探し方や情報の吟味の仕方から、読み方・覚え方まで。しつこいぐらい懇切丁寧で、だからこの厚さになった。
各章のはじめに、独学を志す「無知くん」と独学の達人「親父さん」とのコントのような対話がある。購入前にまずはこの対話だけざっと立ち読みすることをおすすめする。それで「面白い」「使える」と思ったらレジにどうぞ。
第4部に「ある独学者の記録」という文章がある。国語・英語(外国語)・数学について、短編小説のように書かれたこの「記録」を読むと、独学の実際がイメージできる。
ライターであるぼくにとっては、資料の探し方や整理の仕方を解説した第8章・第10章が参考になった。学問を究めるというほど大げさではなくても、日常のちょっとした「知りたい」「調べたい」に役に立ちそう。
本書のいいところは、独学はたいてい挫折するという前提で書かれていること。英会話入門やダイエットと同じように。本書の第1部には目標の立て方や動機付け、学習時間の確保、環境整備と継続などについて詳述されている。10万部突破だそうだが、そのうち独学を続けられる人は何人ぐらいだろう。
梅棹忠夫『知的生産の技術』にはじまり、野口悠紀雄『「超」勉強法』など、ぼくはこの半世紀近くさまざまな独学本・勉強術本を読んできた。本書はその集大成になりそう。今度も挫折するかな?
著者の読書猿はネットでちょっと知られた存在。同名ブログを主宰し、昼間は「いち組織人」として働いているそう。