書評

『パピルスが語る古代都市: ローマ支配下エジプトのギリシア人』(知泉書館)

  • 2024/09/17
パピルスが語る古代都市: ローマ支配下エジプトのギリシア人 / ピーター・パーソンズ
パピルスが語る古代都市: ローマ支配下エジプトのギリシア人
  • 著者:ピーター・パーソンズ
  • 翻訳:髙橋 亮介
  • 出版社:知泉書館
  • 装丁:単行本(514ページ)
  • 発売日:2022-08-03
  • ISBN-10:4862853684
  • ISBN-13:978-4862853684
内容紹介:
1897年,イギリスのエジプト探検隊は,ナイル中部の失われた古代都市オクシリンコスで,ゴミの山から『トマスによる福音書』が書かれた一葉のパピルス紙を発見した。以後,陸続と発掘されたギリシ… もっと読む
1897年,イギリスのエジプト探検隊は,ナイル中部の失われた古代都市オクシリンコスで,ゴミの山から『トマスによる福音書』が書かれた一葉のパピルス紙を発見した。以後,陸続と発掘されたギリシア語パピルスは,その地の人々が廃棄した古典文学や聖書の断片,そして個人の手紙や実務文書など膨大な生活の記録であった。
クレオパトラの死により紀元1世紀にプトレマイオス朝が滅亡した後,エジプトはローマ帝国の属州となったが,支配層をギリシア人が占めるギリシア世界であった。彼らはエジプトに同化しながらギリシア文化を拠り所とし,文字はギリシア語で記すことを決めたのである。
本書は,オックスフォード大学で古典ギリシア語教授を務めた,オクシリンコス・パピルス解読の第一人者である著者が,大量の出土史料を駆使して,当時の社会と文化を余すことなく描き出す。ギリシア人の目に映るローマ皇帝,ナイル川の氾濫と農作物の収穫,市場での経済活動,現金と穀物を扱う銀行取引,厳しい徴税や徴発の制度,子供の教育に奔走する親,病気や怪我に際して助けを求めた魔術や医学など,人々の息づかいを伝えるとともに,迫害を受けた初期キリスト教のあり方や,古典作品について古典学の視点から光が当てられる。
巻頭カラー口絵と,訳者による各章の懇切な要約も付し,古代世界へと誘う,わが国初登場のパピルス学入門である。
ペーパーの語源になるパピルスは、古代エジプトのナイル川流域に生える水草の茎から作られた紙の祖型である。19世紀末、イギリスの探検隊が古代都市オクシリンコスのゴミの山からギリシア語のパピルス文書を発見した。その後も各地でパピルス文書は次々と見出され、文学や聖書の断片、手紙や実務文書などの生活のふくらみが記録されていた。それまで、羊皮紙の写本や碑文などの形でしか残されていなかったから、画期的であった。

それ以後、パピルス学として知られ古代史研究の一翼を担っている。本書の著者は、オックスフォード大学で古典ギリシア語教授を務めていたオクシリンコス・パピルス解読の第一人者。出土した大量のパピルスを駆使して、ヘレニズム期・ローマ帝政期のエジプト社会と文化を余すところなく描き出している。ナイル川の氾濫と農産物、市場の取引、現金と穀物による銀行業務、徴税や徴発の実態、教育にかまける親の姿、病気や怪我で求められた魔術や医学、ローマ皇帝の印象など、そこに生きていた人々の息づかいすらも聞こえてきそうである。まさしくパピルス学入門書。
パピルスが語る古代都市: ローマ支配下エジプトのギリシア人 / ピーター・パーソンズ
パピルスが語る古代都市: ローマ支配下エジプトのギリシア人
  • 著者:ピーター・パーソンズ
  • 翻訳:髙橋 亮介
  • 出版社:知泉書館
  • 装丁:単行本(514ページ)
  • 発売日:2022-08-03
  • ISBN-10:4862853684
  • ISBN-13:978-4862853684
内容紹介:
1897年,イギリスのエジプト探検隊は,ナイル中部の失われた古代都市オクシリンコスで,ゴミの山から『トマスによる福音書』が書かれた一葉のパピルス紙を発見した。以後,陸続と発掘されたギリシ… もっと読む
1897年,イギリスのエジプト探検隊は,ナイル中部の失われた古代都市オクシリンコスで,ゴミの山から『トマスによる福音書』が書かれた一葉のパピルス紙を発見した。以後,陸続と発掘されたギリシア語パピルスは,その地の人々が廃棄した古典文学や聖書の断片,そして個人の手紙や実務文書など膨大な生活の記録であった。
クレオパトラの死により紀元1世紀にプトレマイオス朝が滅亡した後,エジプトはローマ帝国の属州となったが,支配層をギリシア人が占めるギリシア世界であった。彼らはエジプトに同化しながらギリシア文化を拠り所とし,文字はギリシア語で記すことを決めたのである。
本書は,オックスフォード大学で古典ギリシア語教授を務めた,オクシリンコス・パピルス解読の第一人者である著者が,大量の出土史料を駆使して,当時の社会と文化を余すことなく描き出す。ギリシア人の目に映るローマ皇帝,ナイル川の氾濫と農作物の収穫,市場での経済活動,現金と穀物を扱う銀行取引,厳しい徴税や徴発の制度,子供の教育に奔走する親,病気や怪我に際して助けを求めた魔術や医学など,人々の息づかいを伝えるとともに,迫害を受けた初期キリスト教のあり方や,古典作品について古典学の視点から光が当てられる。
巻頭カラー口絵と,訳者による各章の懇切な要約も付し,古代世界へと誘う,わが国初登場のパピルス学入門である。

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