平日は北の職員たちと“格闘”し、週末は韓国に戻る。
南北経済協力事業で北朝鮮に造成された開城(ケソン)工業団地。
20代の韓国人女性が開城で経験した特別な1年間と、北の人々のありのままの素顔を綴ったノンフィクション。
〈ソウルから一時間ほどの距離なのに--。
彼女たちの苦労は、私の祖母の世代の苦労と変わらないと思った。でも、彼女の年齢は二三歳だった。
生きていれば一〇〇歳を超えている祖母が二三歳だった頃の日常が、私の目の前にいる若い母親の日常だった。〉
〈北の人はほとんどの場合、一人だけでいるときは純朴そうに笑いながら頭を下げてあいさつし、二人以上になると目を伏せて無表情で通り過ぎる。それを知ってからは、傷つくこともなかった。この体制の中で共和国の規定に背けば、南で想像できるような懲戒とは次元の異なる処罰が与えられるだろう。そんな状況に南の人も北の人も傷つくことのない日がきてほしい。誰がそばにいようと心から歓迎し、笑うこともできる自由が早くやってくることを願う。----本文より〉
目次
1 開城で感じた春(開城に足を踏み入れた日;北朝鮮歌謡、心に残る人 ほか)
2 開城で体験した夏(賃金戦争とカレイ事件;北の労働者はNG、平壌市民はOK ほか)
3 開城で過ごした秋(統一の花;林秀卿;「ありがとう」と言うのはそんなに大変? ほか)
4 開城で出会った冬(班長さん、みかんが必要なら先に言ってください;職員たちに渡したかったお餅、果物、そしてパン ほか)