書評

『絆回廊 新宿鮫Ⅹ』(光文社)

  • 2017/08/16
絆回廊 新宿鮫Ⅹ / 大沢在昌
絆回廊 新宿鮫Ⅹ
  • 著者:大沢在昌
  • 出版社:光文社
  • 装丁:単行本(433ページ)
  • 発売日:2011-06-03
  • ISBN-10:4334927580
  • ISBN-13:978-4334927585
内容紹介:
巨躯。凄味ある風貌。暴力性。群れない-。やくざも恐れる伝説的アウトローが「警察官を殺す」との情念を胸に22年の長期刑を終え新宿に帰ってきた。すでに初老だがいまだ強烈な存在感を放つとい… もっと読む
巨躯。凄味ある風貌。暴力性。群れない-。やくざも恐れる伝説的アウトローが「警察官を殺す」との情念を胸に22年の長期刑を終え新宿に帰ってきた。すでに初老だがいまだ強烈な存在感を放つというその大男を阻止すべく捜査を開始した新宿署刑事・鮫島。しかし、捜査に関わった人びとの身に、次々と-親子。恩人。上司。同胞。しがらみ。恋慕の念。各々の「絆」が交錯した時、人びとは走り出す。熱気。波瀾。濃度。疾走感。

終局へ、感情の起伏を繊細に描写

新宿鮫が、5年ぶりに帰ってきた。シリーズ第10作となる。

シリーズものの小説には、読者にとっておなじみの登場人物が、途中はらはらどきどきさせながらも、最後には事件にきちんと決着をつけ、心地よい読後感を与えてくれるという、ありがたいご利益がある。しかし、実際に書く立場からすると、さほど楽な仕事ではない。作者自身、パワーを保って書き続けるためには、それなりの工夫が必要になる。

本編のように、10作まで書き継がれた上に、刊行されるたびに話題になるシリーズ作品は、日本の警察小説ではきわめて珍しい。20代前半にデビューして、30年を超えるキャリアを誇る作家の力量は、やはり並のものではない。

主人公鮫島には、〈この男についていけば間違いない〉という安心感があり、それは第1作から変わらない。緊張感を生むのは、むしろ鮫島にからんでくる脇役たちだ。本書では、作品半ばまで姿を現さない、怖いもの知らずの大男、樫原茂のキャラが際立っている。樫原は、刑務所から出たばかりで、ある警察官に昔の借りを返そうと、拳銃の入手を図る。そこへ、暴力団と正体不明の秘密組織、さらに公安関係の団体が絡み、凄絶(せいぜつ)な闘争が繰り広げられる。その渦の中に、一人超然と立ちはだかる鮫島の存在感が、ひときわ印象的だ。

鮫島の上司で、ただ一人の理解者でもある桃井、そして恋人の晶との関係にも暗雲が漂い、終局へ向けて疾走が始まる。この小説は、筋だけ追って読んでも十分におもしろいが、むしろ鮫島が周囲の人びとに抱く、怒り、憎悪、感謝、あるいは共感といった感情の起伏の豊かさと繊細な描写に注目してほしい。

そう、この小説は作者が読む者に感情移入を促し、またその要求に完璧に応えることのできる、懐の深い小説なのである。

新宿鮫 新装版: 新宿鮫1  / 大沢 在昌
新宿鮫 新装版: 新宿鮫1
  • 著者:大沢 在昌
  • 出版社:光文社
  • 装丁:文庫(412ページ)
  • 発売日:2014-02-13
  • ISBN-10:4334766986
  • ISBN-13:978-4334766986
内容紹介:
ただ独りで音もなく犯罪者に食らいつく―。「新宿鮫」と怖れられる新宿署刑事・鮫島。歌舞伎町を中心に、警官が連続して射殺された。犯人逮捕に躍起になる署員たちをよそに、鮫島は銃密造の天才・木津を執拗に追う。突き止めた工房には、巧妙な罠が鮫島を待ち受けていた!絶体絶命の危機を救うのは…。超人気シリーズの輝ける第一作が新装版で登場!!長編刑事小説。

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絆回廊 新宿鮫Ⅹ / 大沢在昌
絆回廊 新宿鮫Ⅹ
  • 著者:大沢在昌
  • 出版社:光文社
  • 装丁:単行本(433ページ)
  • 発売日:2011-06-03
  • ISBN-10:4334927580
  • ISBN-13:978-4334927585
内容紹介:
巨躯。凄味ある風貌。暴力性。群れない-。やくざも恐れる伝説的アウトローが「警察官を殺す」との情念を胸に22年の長期刑を終え新宿に帰ってきた。すでに初老だがいまだ強烈な存在感を放つとい… もっと読む
巨躯。凄味ある風貌。暴力性。群れない-。やくざも恐れる伝説的アウトローが「警察官を殺す」との情念を胸に22年の長期刑を終え新宿に帰ってきた。すでに初老だがいまだ強烈な存在感を放つというその大男を阻止すべく捜査を開始した新宿署刑事・鮫島。しかし、捜査に関わった人びとの身に、次々と-親子。恩人。上司。同胞。しがらみ。恋慕の念。各々の「絆」が交錯した時、人びとは走り出す。熱気。波瀾。濃度。疾走感。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2011年7月24日

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