書評

『赤い糸の呻き』(東京創元社)

  • 2017/08/29
赤い糸の呻き / 西澤 保彦
赤い糸の呻き
  • 著者:西澤 保彦
  • 出版社:東京創元社
  • 装丁:単行本(269ページ)
  • 発売日:2011-08-11
  • ISBN-10:4488024807
  • ISBN-13:978-4488024802
内容紹介:
結婚式場へ向かうエレベータ内で、指名手配犯を監視していたふたりの刑事。突然の停電後に、なんと乗客のひとりが殺害されていた。もっとも怪しいのは、手や服を血で汚した指名手配の男だが…。… もっと読む
結婚式場へ向かうエレベータ内で、指名手配犯を監視していたふたりの刑事。突然の停電後に、なんと乗客のひとりが殺害されていた。もっとも怪しいのは、手や服を血で汚した指名手配の男だが…。表題作「赤い糸の呻き」をはじめ、犯人当てミステリ「お弁当ぐるぐる」、都筑道夫の"物部太郎シリーズ"のパスティーシュ「墓標の庭」など、全五編を収録。"西澤保彦ワールド"全開ともいえる、著者入魂の短編集。

事件を解決に導く推論の応酬

カルトなファンが多い本書の著者は、ミステリーに本来なじまないSF的な展開や、超論理的解決を持ち込んだことで、評価が分かれるかもしれない。それを新しい工夫とみるか、アンフェアな手法とみるかは、読者の判断にゆだねられるだろう。

ただし、この作品集はそうしたSF的手法を用いず、純粋のパズラーになっている。都筑道夫の「退職刑事」シリーズを思わせる、対話中心の構成をとる。つまり、もっぱら対話者の推論の応酬によって、事件を解決に導く〈安楽椅子〉ミステリー、といってよかろう。ことに、表題作の「赤い糸の呻き」は、論理の逆転に逆転が続いて、大いに楽しめる。

特筆すべきは、登場人物の会話が生きいきして、眼前にその場面が浮かび上がることだ。実のところ、小説の会話は現実のそれとは違うものだが、近年は両者が限りなく近づきつつあり、本作品集はその一致を巧みにやり遂げた好例、といっていいだろう。
赤い糸の呻き / 西澤 保彦
赤い糸の呻き
  • 著者:西澤 保彦
  • 出版社:東京創元社
  • 装丁:単行本(269ページ)
  • 発売日:2011-08-11
  • ISBN-10:4488024807
  • ISBN-13:978-4488024802
内容紹介:
結婚式場へ向かうエレベータ内で、指名手配犯を監視していたふたりの刑事。突然の停電後に、なんと乗客のひとりが殺害されていた。もっとも怪しいのは、手や服を血で汚した指名手配の男だが…。… もっと読む
結婚式場へ向かうエレベータ内で、指名手配犯を監視していたふたりの刑事。突然の停電後に、なんと乗客のひとりが殺害されていた。もっとも怪しいのは、手や服を血で汚した指名手配の男だが…。表題作「赤い糸の呻き」をはじめ、犯人当てミステリ「お弁当ぐるぐる」、都筑道夫の"物部太郎シリーズ"のパスティーシュ「墓標の庭」など、全五編を収録。"西澤保彦ワールド"全開ともいえる、著者入魂の短編集。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2011年10月9日

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