書評

『サラバンド・サラバンダ』(新潮社)

  • 2025/09/19
サラバンド・サラバンダ / 藤沢 周
サラバンド・サラバンダ
  • 著者:藤沢 周
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(205ページ)
  • 発売日:2016-04-27
  • ISBN-10:4103163321
  • ISBN-13:978-4103163329
内容紹介:
心が諦めようとしても、身体が諦めない。魂の黄昏時に男が見た情景とは――。差出人にも、故人の名前にも、まったく心当たりのない香典返しの小包が自分宛てに届いた。むろん通夜も葬儀も行って… もっと読む
心が諦めようとしても、身体が諦めない。魂の黄昏時に男が見た情景とは――。差出人にも、故人の名前にも、まったく心当たりのない香典返しの小包が自分宛てに届いた。むろん通夜も葬儀も行っていない。いったい何故、何のために。記憶を整えると、遠い昔に別れた女の名前が蘇り……。老いの入り口に立った男の憂いと怒り、焦燥、絶望、狂気、そしてエロス。芥川賞作家が円熟の筆で描く珠玉の短篇小説集。

明滅 草屈 分身 案山子 燼 錵 未遂 あなめ 禊 或る小景、黄昏のパース

男がぐらりと揺れる瞬間

藤沢さんの描く主人公は、デビューの頃から一貫している。孤独な内面を抱え、焦燥し、絶望し、ときには狂気に陥る。ある場合には、ギリギリのところで踏みとどまる。危うい足どりを、じつに鮮やかな手つきで切り取るのが藤沢さんの真骨頂。

新しい短編集には、相応に年を重ねた男が主人公として描かれる。ぎらついた若さは潮がひくように後退、五十の坂を越えて、体力も気力も衰えた。

そんな男の日常がふいにぐらりと揺れて、別の顔を見せる瞬間がある。そこを掬(すく)いあげる。じつに巧(うま)い。藤沢周は短編作家である。一例を挙げれば、荒れた別荘で草を刈るだけの行為が昔別れた女への未練とつながる「草屈(くさかまり)」など、読みながら笑い、手並みにうなる。
サラバンド・サラバンダ / 藤沢 周
サラバンド・サラバンダ
  • 著者:藤沢 周
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(205ページ)
  • 発売日:2016-04-27
  • ISBN-10:4103163321
  • ISBN-13:978-4103163329
内容紹介:
心が諦めようとしても、身体が諦めない。魂の黄昏時に男が見た情景とは――。差出人にも、故人の名前にも、まったく心当たりのない香典返しの小包が自分宛てに届いた。むろん通夜も葬儀も行って… もっと読む
心が諦めようとしても、身体が諦めない。魂の黄昏時に男が見た情景とは――。差出人にも、故人の名前にも、まったく心当たりのない香典返しの小包が自分宛てに届いた。むろん通夜も葬儀も行っていない。いったい何故、何のために。記憶を整えると、遠い昔に別れた女の名前が蘇り……。老いの入り口に立った男の憂いと怒り、焦燥、絶望、狂気、そしてエロス。芥川賞作家が円熟の筆で描く珠玉の短篇小説集。

明滅 草屈 分身 案山子 燼 錵 未遂 あなめ 禊 或る小景、黄昏のパース

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2016年6月23日

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