書評

『作家は移動する』(新書館)

  • 2026/08/26
作家は移動する / 青木 保
作家は移動する
  • 著者:青木 保
  • 出版社:新書館
  • 装丁:単行本(269ページ)
  • 発売日:2010-08-25
  • ISBN-10:4403211038
  • ISBN-13:978-4403211034
内容紹介:
小説を読む歓び。文化人類学の先端に立つ青木保が村上春樹ほか現代作家を読み解く。第一章 移動の時代移動から見てゆく/アット・ホーム/亡命と創造/移動と思索/移動と主体第二章 移動… もっと読む
小説を読む歓び。文化人類学の先端に立つ青木保が村上春樹ほか現代作家を読み解く。

第一章 移動の時代
移動から見てゆく/アット・ホーム/亡命と創造/移動と思索/移動と主体

第二章 移動する容疑者――多和田葉子作品から
移動と「来るべき明日」としての死/容疑者の移動/「エクソフォニー」

第三章 移動と逃走の狭間で――リービ英雄作品から
ヘンリーたけしレウィツキーは中国で/過去と現在 /名前と遡行/行けない場所
いるはずのない場所で /千々にくだけて/移動と逃走

第四章 移動による静謐――堀江敏幸作品から
移動の影/秘蹟としての「はずれ」空間/歩く、乗る、漕ぐ
残酷な比喩/郊外の移動する者/停泊という移動

第五章 摩天楼から遷化へ――宮内勝典作品から
摩天楼の底から/他所者から外国人へ /ニューヨークの四季
春が来て、夏が去り、そして/「九・一一」の衝撃なのか
甦るアメリカ/甦るベトナム/X師を求めて
ガイドブックの間違い/移動の先にある充足

第六章 移動の中の静止――池澤夏樹作品から
移動の作家 /すばらしい新世界/「辺境」の「辺境」で
アレクサンドリア世代?/イギリスから出てゆく作家/「移動の中の静止」
バラの贈り物/移動するモラリスト

第七章 使いみちのない風景――村上春樹作品から
「偶然の旅人」 /「使いみちのない風景」/「遠い太鼓」
音は移動し、音楽は流れる/マイナー・ポエトの中の
音楽家の創造行為と文学者の……/朝日のようにさわやかに……
シャツ/「走る」/日本人と英語

第八章 作家は移動する
作家は行動する/作家は移動する/いつも卵の側に

補 章 「イッツ・オンリー・ア・ペイパームーン」――『1Q84』青豆の物語
移動とハードボイルド/暴力と銃のレッスン/性の過剰と食の欠如
「所詮はただの紙の月」/「愛」がなければ /謎を全部解く必要はない
「コード・ヒロイン」/「移動」と「感動」

あとがき

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

豊饒な言語表現呼び覚ます

いまの日本には、移動を余儀なくされる作家はいないかもしれない。やむにやまれぬ、文学以外の理由から、日本ではない土地に住み続けている作家はたぶんかなり少ないだろう。

だが、ちょっと考えてみよう。楊逸やシリン・ネザマフィといった日本語を母語としない作家たちが、どれだけ豊かな日本語文学を生み出していることか。

同じことを外国に視点を置いて考えてみると、ドイツ語で書く多和田葉子や日本語で書くリービ英雄は、それぞれの言語に計り知れない豊饒(ほうじょう)さを与えているのだ。

文化人類学者・青木保は、江藤淳の『作家は行動する』を十分に意識しながら、「作家は移動によって行動する」という命題を提出している。

扱われている作家は六人。先に挙げた多和田、リービ以外には、堀江敏幸、宮内勝典、池澤夏樹、そして村上春樹だ。

作品世界の中に入り込み、縦横に引用し、その世界を踏破している。引用文は、オリジナルから切り離されているのに、青木の文章の中で生き生きとしている。このあたり、さすがの手腕である。読者の目線にこだわった現代文学論。


作家は移動する / 青木 保
作家は移動する
  • 著者:青木 保
  • 出版社:新書館
  • 装丁:単行本(269ページ)
  • 発売日:2010-08-25
  • ISBN-10:4403211038
  • ISBN-13:978-4403211034
内容紹介:
小説を読む歓び。文化人類学の先端に立つ青木保が村上春樹ほか現代作家を読み解く。第一章 移動の時代移動から見てゆく/アット・ホーム/亡命と創造/移動と思索/移動と主体第二章 移動… もっと読む
小説を読む歓び。文化人類学の先端に立つ青木保が村上春樹ほか現代作家を読み解く。

第一章 移動の時代
移動から見てゆく/アット・ホーム/亡命と創造/移動と思索/移動と主体

第二章 移動する容疑者――多和田葉子作品から
移動と「来るべき明日」としての死/容疑者の移動/「エクソフォニー」

第三章 移動と逃走の狭間で――リービ英雄作品から
ヘンリーたけしレウィツキーは中国で/過去と現在 /名前と遡行/行けない場所
いるはずのない場所で /千々にくだけて/移動と逃走

第四章 移動による静謐――堀江敏幸作品から
移動の影/秘蹟としての「はずれ」空間/歩く、乗る、漕ぐ
残酷な比喩/郊外の移動する者/停泊という移動

第五章 摩天楼から遷化へ――宮内勝典作品から
摩天楼の底から/他所者から外国人へ /ニューヨークの四季
春が来て、夏が去り、そして/「九・一一」の衝撃なのか
甦るアメリカ/甦るベトナム/X師を求めて
ガイドブックの間違い/移動の先にある充足

第六章 移動の中の静止――池澤夏樹作品から
移動の作家 /すばらしい新世界/「辺境」の「辺境」で
アレクサンドリア世代?/イギリスから出てゆく作家/「移動の中の静止」
バラの贈り物/移動するモラリスト

第七章 使いみちのない風景――村上春樹作品から
「偶然の旅人」 /「使いみちのない風景」/「遠い太鼓」
音は移動し、音楽は流れる/マイナー・ポエトの中の
音楽家の創造行為と文学者の……/朝日のようにさわやかに……
シャツ/「走る」/日本人と英語

第八章 作家は移動する
作家は行動する/作家は移動する/いつも卵の側に

補 章 「イッツ・オンリー・ア・ペイパームーン」――『1Q84』青豆の物語
移動とハードボイルド/暴力と銃のレッスン/性の過剰と食の欠如
「所詮はただの紙の月」/「愛」がなければ /謎を全部解く必要はない
「コード・ヒロイン」/「移動」と「感動」

あとがき

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2010年10月6日

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