書評

きんぎょが にげた (幼児絵本シリーズ)(福音館書店)

  • 2017/08/09
きんぎょが にげた (幼児絵本シリーズ) / 五味 太郎
きんぎょが にげた (幼児絵本シリーズ)
  • 著者:五味 太郎
  • 出版社:福音館書店
  • 装丁:ハードカバー(24ページ)
  • 発売日:1982-08-31
  • ISBN:4834008991

※書店によっては、在庫の無い場合や取り扱いの無い場合があります。あらかじめご了承ください。
※詳しい購入方法は、各ネット書店のサイトにてご確認ください。

大好き!ごみおじしゃん

「ビー玉ぶうちゃん、ビーぶうちゃん。おなかにビー玉はいってる。あか、あお、きいろ、しろ、みどり。ビー玉ぶうちゃん、ビーぶうちゃん」

ペットボトルで作ったブタに、ビー玉を入れて、息子と遊んでいた。口から出まかせに歌を作ってやったら、これがえらく気に入ったようで、自分でも「ビー玉ぶうちゃん、ビーぶうちゃん」と繰り返している。ちょっと得意になって「この歌、おかあさんがつくったんだよ~」と言うと、「ちがう、ちがう、ごみおじしゃん!」と言われてしまった。

「ごみおじしゃん」とは、五味(ごみ)太郎さんのこと。絵本の最後のページに、写真入りで著者紹介が載っているものがある。それを見て「だあれ?」と聞くので、「これは、ごみおじさんだよ。このご本を書いたひとだよ」と教えていた。そのうち子どもは、印象深い言葉は、すべて「ごみおじしゃん」が作ったもの、と思うようになったようだ。それほど、我が家には「ごみおじしゃん」の絵本があふれている。

きっかけは『きんぎょがにげた』。子どもの本に詳しい人が「ぜひ読んで」と送ってくれた。金魚鉢(ばち)から金魚が逃げだし、カーテンの模様になったり、キャンディの瓶に入ってすましていたり、おもちゃの中にまぎれていたり……。

「こんどはどこ?」と尋ねると、子どもは嬉々(きき)として、金魚を指さす。逃げては隠れる金魚を、追いかけて探すだけで、ほんとうに楽しい。ちょっと下品な言いかただけれど、こんなに食いつきのいい絵本は、そうないと思われる。せがまれるままに、来る日も来る日もページをめくっていた。そしてあるとき、ふっと思った。「これは、金魚の自分探しの旅なんだ」と。

ひとりぼっちの金魚鉢を飛びだして、きれいな模様になったり、甘(あま)いお菓子に囲まれてみたり、おもちゃの国に住んでみたり。あこがれていたこと(たぶん、どんな子どもも、やってみたいこと)が次々と現実のものになる。けれど、結局そこには自分の居場所はない、と金魚は感じてしまう。そしてまた、別の場所を求めて飛びだしてゆく……。素敵(すてき)なラストシーンの一歩手前に、鏡に映る金魚自身の姿があるのも象徴的だ。

もちろん子どもは、こんな「解釈」をすることなく、絵本を楽しんでいる。けれどその背景にあるテーマは、じんわりと沁(し)みているような気がする。一緒に読む大人にも、同じことが語りかけられている。

子どもが読んで無条件に楽しく、大人にとっても発見がある。それが、五味太郎さんの絵本だ。すっかりファンになって、次々と五味さんの絵本を買い、この「かーかん、はあい」のイラストもお願いしてしまった、という次第です。

【この書評が収録されている書籍】
かーかん、はあい 子どもと本と私 (朝日文庫) / 俵万智
かーかん、はあい 子どもと本と私 (朝日文庫)
  • 著者:俵万智
  • 出版社:朝日新聞出版
  • 装丁:文庫(224ページ)
  • 発売日:2012-05-08
  • ISBN:4022646667

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※詳しい購入方法は、各ネット書店のサイトにてご確認ください。

きんぎょが にげた (幼児絵本シリーズ) / 五味 太郎
きんぎょが にげた (幼児絵本シリーズ)
  • 著者:五味 太郎
  • 出版社:福音館書店
  • 装丁:ハードカバー(24ページ)
  • 発売日:1982-08-31
  • ISBN:4834008991

※書店によっては、在庫の無い場合や取り扱いの無い場合があります。あらかじめご了承ください。
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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞

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