書評

『楽園のカンヴァス』(新潮社)

  • 2018/04/30
楽園のカンヴァス / 原田 マハ
楽園のカンヴァス
  • 著者:原田 マハ
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:ハードカバー(294ページ)
  • 発売日:2012-01-00
  • ISBN-10:4103317515
  • ISBN-13:978-4103317517
内容紹介:
ニューヨーク近代美術館の学芸員ティム・ブラウンは、スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。MoMAが所蔵する、素朴派の巨匠アンリ・ルソーの大作『夢』。その名作とほぼ同じ構図、同じ… もっと読む
ニューヨーク近代美術館の学芸員ティム・ブラウンは、スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。MoMAが所蔵する、素朴派の巨匠アンリ・ルソーの大作『夢』。その名作とほぼ同じ構図、同じタッチの作が目の前にある。持ち主の大富豪は、真贋を正しく判定した者に作品を譲ると宣言、ヒントとして謎の古書を手渡した。好敵手は日本人研究者の早川織絵。リミットは七日間-。ピカソとルソー。二人の天才画家が生涯抱えた秘密が、いま、明かされる。

手だれの美術ミステリー

この作品は、日本ではまだ数少ない、うんちくものの美術ミステリーである。

ニューヨーク近代美術館のアシスタント・キュレーターで、画家アンリ・ルソーの研究家でもあるティム・ブラウンは、休暇を利用してスイスのバーゼルに飛ぶ。著名なコレクター、バイラーから秘蔵するルソーの未公開作品を鑑定してほしい、という招待状がきたのだ。それを、ティムは名前が1字違うやり手の上司、トム・ブラウンに届いたものと判断したが、絶好の機会を逃したくない一心で、トムになりすます。

バイラー邸に着くと、そこにはもう1人同じ招待を受けた、優秀なルソー研究家の早川織絵がいる。2人はバイラーから、ニューヨーク近代美術館が所蔵する「夢」と同じ構図を持つ、未知の作品「夢をみた」を見せられる。バイラーが2人に与えた課題は、1冊の古書を交代で7日間読んだあと、問題の作品の真贋(しんがん)を判定せよ、というものだった。勝った者には、その絵をどう処分してもよいという、取り扱い権が与えられる。

2人は、だれが書いたか分からぬ古書を、交代で読み継いでいく。そこには、ルソーのほかモデルの女性ヤドヴィガやピカソ、アポリネールなどが登場し、知られざるエピソードがつづられていた。その古書は、いったいだれの手になるものなのか。各章の最後に記された、ばらばらのアルファベットは、果たして何を意味するのか。

こうした、ミステリアスな状況設定の中で、ルソーに関する逸話や、ピカソの友情秘話が、しだいに明らかにされる。著者は、本来ミステリー作家ではないはずだが、本作品の構成はまさに手だれのそれであり、終始飽きさせることがない。

中でも「夢をみた」の真贋にまつわる謎解きは、十分に読者を驚かせるだろう。したがって、ここでは伏せておくことにする。
楽園のカンヴァス / 原田 マハ
楽園のカンヴァス
  • 著者:原田 マハ
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:ハードカバー(294ページ)
  • 発売日:2012-01-00
  • ISBN-10:4103317515
  • ISBN-13:978-4103317517
内容紹介:
ニューヨーク近代美術館の学芸員ティム・ブラウンは、スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。MoMAが所蔵する、素朴派の巨匠アンリ・ルソーの大作『夢』。その名作とほぼ同じ構図、同じ… もっと読む
ニューヨーク近代美術館の学芸員ティム・ブラウンは、スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。MoMAが所蔵する、素朴派の巨匠アンリ・ルソーの大作『夢』。その名作とほぼ同じ構図、同じタッチの作が目の前にある。持ち主の大富豪は、真贋を正しく判定した者に作品を譲ると宣言、ヒントとして謎の古書を手渡した。好敵手は日本人研究者の早川織絵。リミットは七日間-。ピカソとルソー。二人の天才画家が生涯抱えた秘密が、いま、明かされる。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2012年3月25日

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