書評

『女王様と私』(角川書店(角川グループパブリッシング))

  • 2017/09/01
女王様と私 / 歌野 晶午
女王様と私
  • 著者:歌野 晶午
  • 出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 装丁:文庫(494ページ)
  • 発売日:2009-09-25
  • ISBN-10:4043595069
  • ISBN-13:978-4043595068
内容紹介:
真藤数馬は冴えないオタクだ。無職でもちろん独身。でも「ひきこもり」ってやつじゃない。週1でビデオ屋にも行くし、秋葉原にも月1で出かけてる。今日も可愛い妹と楽しいデートのはずだった。… もっと読む
真藤数馬は冴えないオタクだ。無職でもちろん独身。でも「ひきこもり」ってやつじゃない。週1でビデオ屋にも行くし、秋葉原にも月1で出かけてる。今日も可愛い妹と楽しいデートのはずだった。あの「女王様」に出逢うまでは…。数馬にとって、彼女との出逢いがめくるめく悪夢への第一歩だったのだ。―全く先が読めない展開。個性的で謎めいた登場人物。数慄的リーダビリティが脳を刺激する、未曾有の衝撃サスペンス。
トヨザキ的評価軸:
◎「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」

幾つかの小さな「!」と二つの大きな「!!」。ゥチわ驚いたぉ

歌野晶午たんとゅえばぁ、語り=騙りのテクニックを駆使した叙述トリックもの『葉桜の季節に君を想うということ』(文春文庫)でェ、二〇〇四年度版「このミステリーがすごい!」(宝島社)第一位になったのですぅ。鬼面人を驚かすってゆーヵ、そーゅー小説を書かせたら上手ヵなって、ゥチわ思うぉ。なのでェ、新しく出た『女王様と私』も読ンでみたわけじゃないですヵあ。したらァ――。

葉桜の季節に君を想うということ  / 歌野 晶午
葉桜の季節に君を想うということ
  • 著者:歌野 晶午
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:文庫(477ページ)
  • 発売日:2007-05-01
  • ISBN-10:4167733013
  • ISBN-13:978-4167733018
内容紹介:
「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして-。あらゆるミステリーの賞を総なめにした本作は、必ず二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本です。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

ああ、いけないいけない。脳内が絵夢たん菌に冒されてしまった。絵夢ってのはこの小説の語り手であるオタク男〈ぼく〉が連れ歩いてる〈身長30センチ、体重95グラム、素材は強化プラスチック〉の人形なんですけど、〈ぼく〉にとっては〈運命の妹〉。つまり、こいつは妹萌え系のキモオタなわけ。で、その絵夢ってのが「そういう意味ぢゃなくってえ、ここゎおにぃちゃんの頭ン中でそ」みたいな話し方をするんです。てか、この小説を読む限りでは、どうも小学生女子全般、こんな斬新な日本語を駆使してメールを打ってるみたいで……。四十四歳にはまったくついていけない、めくるめく世界が広がってる物語なんでございますの。

さて、この無職・独身・殻潰しのオタク男が絵夢を連れ、小学生女子をたんと見ることができるスポットに繰り出すわけですが、そこで遭遇したのが、〈ぼく〉をロリコンだと看破し、蹴りを入れ、「ヴァカヴォケデヴ」と罵倒する×××。そうなんです、これも『葉桜』同様叙述トリックが施されたミステリーなので、未読の方のためにはちょっとした情報も差し控えなければならないという、まったくもってレビュアー泣かせの一冊で、まだスペースが残ってるのに、わたくし一体どうしたらいいんでございましょうか。

「真藤数馬のうんざりするような現実」「真藤数馬のめくるめく妄想」「真藤数馬のまぎれもない現実」の三つのパートに分かれてはいるものの、現実篇はプロローグとエピローグ的な扱い(とはいえ、大仕掛けはここに仕込まれているのですが)になっており、読ませどころはなんといっても、〈ぼく〉が“女王様”にかしずき、こづき回され、大変な受難を味わう妄想篇にあることは間違いありません。幾つかの小さな「!」と、二つの大きな「!!」。注意深く読んでいれば「!!」の予測はある程度つくものの、妄想篇で〈ぼく〉が巻き込まれていく連続殺人事件の真相をめぐる「!」に関しては、少なくともゥチわ驚いたぉ。とゆぅわけなのでェ、おにいちゃんも絶対読むンでそ? でそ? でそ? ね☆

……しまった(自己嫌悪)。

【この書評が収録されている書籍】
正直書評。 / 豊崎 由美
正直書評。
  • 著者:豊崎 由美
  • 出版社:学習研究社
  • 装丁:単行本(228ページ)
  • 発売日:2008-10-00
  • ISBN-10:4054038727
  • ISBN-13:978-4054038721
内容紹介:
親を質に入れても買って読め!図書館で借りられたら読めばー?ブックオフで100円で売っていても読むべからず?!ベストセラーや名作、人気作家の話題作に、金、銀、鉄、3本の斧が振り下ろされる。

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女王様と私 / 歌野 晶午
女王様と私
  • 著者:歌野 晶午
  • 出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 装丁:文庫(494ページ)
  • 発売日:2009-09-25
  • ISBN-10:4043595069
  • ISBN-13:978-4043595068
内容紹介:
真藤数馬は冴えないオタクだ。無職でもちろん独身。でも「ひきこもり」ってやつじゃない。週1でビデオ屋にも行くし、秋葉原にも月1で出かけてる。今日も可愛い妹と楽しいデートのはずだった。… もっと読む
真藤数馬は冴えないオタクだ。無職でもちろん独身。でも「ひきこもり」ってやつじゃない。週1でビデオ屋にも行くし、秋葉原にも月1で出かけてる。今日も可愛い妹と楽しいデートのはずだった。あの「女王様」に出逢うまでは…。数馬にとって、彼女との出逢いがめくるめく悪夢への第一歩だったのだ。―全く先が読めない展開。個性的で謎めいた登場人物。数慄的リーダビリティが脳を刺激する、未曾有の衝撃サスペンス。

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初出メディア

TV Bros.

TV Bros. 2005年10月1日

多彩な連載陣のコラムが人気のポップカルチャーTV情報誌。豊﨑由美氏の書評コーナー「帝王切開金の斧」が好評連載中。

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