書評
村上 陽一郎「2024年 この3冊」毎日新聞|青野由利『脳を開けても心はなかった 正統派科学者が意識研究に走るわけ』(築地書館) 、村田純一、渡辺恒夫『心の哲学史』(講談社)、アシル・ムベンベ『黒人理性批判』(講談社)
2024年「この3冊」
<1>『脳を開けても心はなかった 正統派科学者が意識研究に走るわけ』青野由利著(築地書館)
<2>『心の哲学史』村田純一、渡辺恒夫編(講談社)
<3>『黒人理性批判』アシル・ムベンベ著(講談社)
<1>と<2>はアプローチの方法はまるで違うが、主題に共通点がある。デカルトが、物と心の存在様式の根本的差を、見事に明確化して後、心の学問的追究の現場は、専ら心理学が担い、自然科学は物の振る舞いだけを追求し、心には立ち入らないはずだったが、その科学も、現代では脳科学をはじめ、いくつかの領域が、心や意識の解明に関心を示すようになった。<1>は、まさしく現代の科学(者)が心にどう取り組もうとするかを、ジャーナリストの目で鮮やかに捉えて興味深い。
<2>はむしろ科学以外の立場でのアプローチを、研究者の立場で振り返った論集として、珍しい成果となった。
<3>は、およそ異った世界だが、カメルーン出身の著者が、自らの思想形成の状況を語った、我々にはとかく未知(無知)の領域を伝えてくれる稀有の書。
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